おうし座
虚のお金を実のお金に
ナマものとしてのお金
今週のおうし座は、シュタイナーの「老化する貨幣」という経済理論のごとし。あるいは、「お金とは何か」ということを身をもって問うていこうとするような星回り。
第一次世界大戦によって各国が荒廃していた1920年代を背景に、ルドルフ・シュタイナーは「老化する貨幣」という考え方を提唱しました。これは端的に言えば、25年ほどの有効期限を設けてお金の価値に高低差をつけることで、決済・融資・贈与といった領域間で自動的な調整が行われれば、経済社会のバランスが保たれるだろうというものでした。
健全な社会においては、貨幣は他人の生産した財貨の小切手にすぎない。その小切手が、経済領域においてどのような財貨とも交換し得るのは、その小切手所有者が社会の生産部門の労働をして、生産物を社会に供給する責任を果たしている限りにおいてである。(…)従って、貨幣が生産活動の表象としての機能を失った時は、貨幣価値をその所有者に対してもたなくなる処置を講ずるべきであろう。それについては、貨幣所有権が一定の時日を経過した後、何らかの手段で社会に還付されるようにする。(ルドルフ・シュタイナー『社会問題の核心』)
すなわち、シュタイナーはその価値が永遠に変わることがないと考えられていたお金の価値の保蔵機能に限界を持たせることで(あるいはお金の捉え方を変えて)、貯蓄された貨幣がただ死蔵されることを防ぐ一方、実体経済とは無縁な投機マネーへと吸い上げられることなく、社会のより純粋な生産活動へと投下されることで、お金が体中をめぐる血液のように機能していくよう促していこうとした訳です。
5月26日におうし座から数えて「富」を意味する2番目のふたご座に拡大と発展の木星が約12年ぶりに回帰するところから始まった今週のあなたも、お金を貯めこむのでなく、いかにいきいきと循環させていけるかということを、中長期的に考えてみるにはちょうどいいタイミングでしょう。
粘菌の生存戦略
梅雨時の森に入ると、腐った樹木の表面などに、思わずハッとするほど美しい色彩をした粘っこい感触の生き物らしきものが貼りついているのを見かけることがあります。
そして、根気強く観察を続けていれば次第にその生き物らしきものが、ゆっくりと動いているのが分かるでしょう。それはアメーバ状の原形体の状態にある粘菌が、樹木の表面にいる他の生物を捕食しながら進んでいる現場であり、このとき粘菌は細胞分裂を繰り返しながらまさに「動物」として振る舞っているのです。
とはいえ、粘菌はいつもその状態にある訳ではなく、やがて雨が止みあたりが乾燥してくると、動きをとめて一斉に茎をのばし、その先端に胞子嚢(ほうしのう)をふくらませて、あたり一面に胞子を飛ばす「植物」へと変身し、環境の過酷さにもじっと耐え忍んでいきます。
環境の変化に応じて「動物」とも「植物」とのあいだでつねにゆらいでいる粘菌の生態は、どこか自然や人の営みや、他者を思いやる心を支えんとするシュタイナーの経済理論の実践や、生きたお金の回し方ということにも通じているように思います。
今週のおうし座もまた、いっそ自身のお金をぴちぴちとうごめきながら、生(動物)と死(植物)をサイクルさせている粘菌と見なして、その運用法について試行錯誤してみるといいかも知れません。
おうし座の今週のキーワード
「お金はもう死んでいる」