おうし座
人生終わってみなければ分からない
選択と集中と継続
今週のおうし座は、『春の水山なき国を流れけり』(与謝蕪村)という句のごとし。あるいは、おだやかに、ゆるゆると始動していこうとするような星回り。
雪解けのあと、少しずつ量が増して豊かになっていく「春の水」を季語に据えた一句。天地にあふれる春の色に、広い緑の野のまんなかを流れる大河。
作者はこの明るくおだやかに変貌していくおおらかな景色の広がりを、まるで水墨画を描くように、大胆にも余計な線を省略しているのです。
そうして春の野山の緑には一切触れず、ただただ水の豊かさに言及することで、かえって平野特有の開けた空間の広がりを連想させることに見事成功している。
これは「春の水」という季語のもつおだやかな雰囲気にも合っているだけでなく、物事をつつがなく着実に発展させていく際の心得全般にも通じているのではないでしょうか。
すなわち、最初は脳が喜んで反応しそうなディテールはできる限りそぎ落とし、その代わりにお腹をどしっと安定させてくれるような基本的な情報だけを入れて、それをひたすら淡々と繰り返していく(「最初から色んな参考書をそろえる受験生はうまくいかない、これと決めた一冊を少しずつでも毎日消化していく」的な)。
2月29日におうし座から数えて「視野の広がり」を意味する11番目のうお座で土星と太陽と水星の3つの惑星が重なっていく今週のあなたもまた、中長期的な計画を開始していくにあたってのマインドセットや動き出しを整えていきたいところです。
「年寄る」と「年取る」の区別
江戸時代の三大俳人の一人ともされた与謝蕪村は、その筆頭格である松尾芭蕉とは違って、だいぶ遅咲きの人でしたが、これは「年寄る」という言葉を「年取る」という言葉と明確に区別して使っていた点からも伺えます。
人間、何もしなくてもみな平等に年は取るものですが、「年寄る」とは文字通り、年が自分に寄ってくるように、仕事であれ旅路であれ恋の道であれ、ひとつの境地を深めていくことを言ったのです。
例えば、旅と言っても今はカジュアルになりましたが、江戸時代の旅というのは、原則的に徒歩であり、肉体的にも極めて負担が重く、一度旅に出てしまえば二度と同じ場所に戻ってこれる保証はありませんでしたし、年齢を重ねれば重ねるほど、「次が最後の旅になる」という予感がのしかかってくるものでした。
蕪村は俳句もまた、「次で最後かも知れない」という思いで詠んでいたのでしょうし、その時につねに頭にあったのは、生涯の師と仰いだ芭蕉のような句を自分も残せたらという思いだったのではないでしょうか(ただし2人は生まれた時代も異なり、直接の接点はなかった)。
今週のおうし座もまた、真剣に向き合うべきものに「年寄る」ための手続きを整え、そのための時間を確保していくといいでしょう。
おうし座の今週のキーワード
腹を決める