おうし座
阿呆のような笑顔
風邪の神はどんな顔?
今週のおうし座は、『ゑがほなり風邪の子ゑがく風邪の神』(榮猿丸)という句のごとし。あるいは、自分でも忘れていた表情が不意に浮かんでくるような星回り。
もし今働き盛りとされている年代の人間に「風邪の神」を描かせたなら、恐らくそこには笑顔が描かれる代わりに、悪魔や亡霊じみた顔が並ぶのではないでしょうか。それくらい、現代において社会や会社というものは不安や恐れによって駆動しているように思います。
「もしこんな時に仕事に穴をあけてしまったら」「上司や同僚からなんと思われるか」「来月の支払いがヤバい」「家族の手前、無職になる訳にはいかない」etc
いつから現代人の心理や動機を支配する“神”の声は、同調圧力をせまる恨みがましい他者であったり、不機嫌な上司や社長や株主の発するそれになってしまったのか。そんなことを思わず考えてしまうくらい、掲句に表されているのはそうした想定内のものとは見事なまでに対照的です。
少なくとも「そりゃ子供は獲得免疫が未熟だから」という一言で片づけるにはあまりに惜しいと感じさせる何かが、掲句の「ゑがほ」にある。それは真面目くさった機械的秩序から人間のこころを解放させてくれるようなディオニュソス的陶酔の表情であり、社会の中でそれぞれに身を固めてきた私たちが、いつの間にか忘れてしまった神=自分自身の顔なのかも知れません。
2月14日におうし座から数えて「公的顔」を意味する10番目のみずがめ座で火星と冥王星とが重なって「大胆不敵さ」が強調されていく今週のあなたもまた、掲句の「風邪の子」のように不意にいい意味で阿呆のような顔になっていくことでしょう。
仮の世界と本当の世界
かつてマックス・ウェーバーは『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』の中で、神に召されたと思ってまじめに仕事を続ければ、商売繁盛がついてくるという「世俗内禁欲」ということに言及し、合理化された現代社会では人は職業人に徹する他はないのだという考えを展開しました。
立派な職業倫理だとは思います。しかし、それは時に過剰なまでに自分のアイデンティティを職業と結びつけることで人を追いつめ、真面目な人に不必要な責任を負わせることで、死に追いやってしまう危険を大いに孕んでいるのではないでしょうか(他ならぬヴェーバー自身もある時精神に異常をきたし、オカルトに走りました)。
職務をまっとうすることは大切ですし、立派な職業につくことは自尊心を高めてくれますが、それはあくまで社会という約束事の枠内における仮の世界の話であって、それを超えたところに本当の自分があり、本当の世界があるのだということも、心のどこかに置いておくべきでしょう。
今週のおうし座もまた、もし今あなたが何か根本的な無理をしているか、どこか誤った方向に進んでしまっているという予感をかすかにでも持っているのならば、そこに歯止めをかけて行き詰まりを解消していくにはちょうどいいタイミングを迎えているはずです。
おうし座の今週のキーワード
ディオニュソス的陶酔