おうし座
世代から世代へ手渡されていくもの
月日の果ての静けさ
今週のおうし座は、『冬座敷かつて昭和の男女かな』(宇多喜代子)という句のごとし。あるいは、世代から世代への連鎖の中で、自分たちなりの貢献の形を思い定めていくような星回り。
「男女」は夫婦なのか、同世代の人びとをそう呼んでいるのか、読み手の想像力に委ねられています。しかし、男女という対比した表現にこだわるなら、やはり夫婦か、特別な結びつきの2人がふさわしいでしょう。
「昭和」は戦争の時代であり、高度経済成長などで世の中が大きく変化した時代でしたが、そんな激動を生き抜き、数えきれない苦難を共にして、今もなお人間の、とても言葉では言い尽くせない思いが掲句には湛えられています。
しかも、「冬座敷」の透徹した空気と正座している2人の端正な姿を思い浮かべてみると、そこには長い月日の果ての静けさに溢れており、また、平成や令和といった新しい世に向けられたまなざしの深さのようなものも伺えてきます。
いま令和を現役世代として生きている夫婦や恋人も、あと数十年後もすれば新しい世を静かに見守る側へ回っていく訳ですが、果たしてどんな佇まいになるのでしょうか。
1月21日におうし座から数えて「責務」を意味する10番目のみずがめ座へと冥王星が移っていく今週のあなたもまた、そんな現役の世代を担うひとりとして、いかに混迷の時代を生き抜き、次の世への責任を果たしていくべきかを考えていきたいところです。
異なる個人と魂の同一性
「この子はおばあちゃん(おじいちゃん)の生まれ変わりだ」などと誰かが言うのを聞いたり、実際に自分がそう言われたことはないでしょうか。
死んだらそれで終わり、原子か塵に還元されて無になるのだという近代科学的な「イデオロギー」にこだわっている人にはずいぶん奇異に聞こえるかも知れませんが、こうした異なる個人の中に「魂の同一性」を感じとり、愛でようとする伝統は、日本だけにとどまらず、太平洋地域に住むネイティブの文化や伝承には、祖父母と孫、曾祖父母と曾孫の特別な結びつきを語る事例が豊富に見られます。
そうした伝統に立ち返ってみると、先の老夫婦を思わせる「昭和の男女」は、魂のリアリティの次元では、まだ幼い「令和の男女」であってもおかしくない訳で、逆に彼らから何を学んでいけるかという問い方であってもいいはずです。
今週のおうし座もまた、いつまでも老いることのない子供であると同時に、ほとんど死につつある老人でもあるような、そうしたリアリティの次元から時代にコミットしていくことがテーマなのだとも言えるかもしれません。
おうし座の今週のキーワード
「宇宙のように複数であれ」(フェルナンド・ペソア)