おうし座
まなざしのデザイン
どんなに多忙であったとしても
今週のおうし座は、『自省録』を書き続けたマルクス・アウレリウスのごとし。あるいは、自分自身に呼びかけ、みずからに行動の指針を指し示していこうとするような星回り。
現代人は技術の進歩と比例するかのように、ますます多忙を極めるようになってきていますが、こと多忙さという点では最盛期のローマ帝国で第16代皇帝となって巨大組織を牽引したマルクス・アウレリウスに匹敵する者はほとんどいないでしょう。
彼はプラトンが理想とした哲人政治を、人類史上ただ一人行った指導者でもありましたが、彼が自分自身との対話の記録を日記形式で残した『自省録』は、なんとゲルマン人の反乱を制圧すべく向かった、はるか北方の遠征地でも書き継がれていました。
もはやさ迷い歩くな。(…)おまえの生の目的に向かって一路急げ
おまえがある者の無恥に怒りを覚えるときには、直ちにおまえ自身に尋ねよ、『いったいこの宇宙の無恥な者どもが存在しないことができるか』と。ならば、できないことを求めぬことだ
このように、彼は日記に起きた事実をそのまま記録したのではなく、自分がなすべき行動の規範を綴ったのです。そうすることで、実行すべき内容が意識の上に自然と定着していく。2000年前の超多忙な著者によって壮年時代から晩年まで実践され続けたこうした『自省録』というスタイルは、誰にでも簡単に実行できる、人生をより手応えのあるものにする優れた方法論と言えます。
彼は生来とても内向的な人で、華々しい皇帝職よりも本来は学者として静かにものを考えることを好んでいたのですが、『自省録』はそんな彼だからこそ編み出せた、自分の人生に起きる出来事を受容し、困難を乗り越えるための秘密に他なりませんでした。
12月27日におうし座から数えて「言語化」を意味する3番目のかに座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、現実に起きた出来事をいかに受容していくかという問題に直面していきやすいはず。新しい年を迎えるついでに、試しに「起きたことにはすべて意味がある」という観点から、思いついたことをつらつらと書いてみるといいでしょう。
まなざしを更新しつづける
ランドスケープアーティストのハナムラチカヒロは『まなざしのデザイン―〈世界の見方〉を変える方法―』の中で、「人が最も関心を持って眺めるのは人」なのだと指摘していますが、今週のおうし座はこのことを改めて思い出していくことになるかも知れません。
現代社会はますます次にどこへ向かうのかがが見えない状況に進みつつありますが、それは他ならぬ<私>のまなざしをみずからデザインすることが重要になっていくということでもあるのだとハナムラは言います。
あらゆる事柄は外から私たちの心を捕まえて、まなざしを固定しようとする。それは私たちの自発的な選択だけではなく、時には誰かが意図的に挿し込んでくることもある。私たちのまなざしが何かに固定されている方が、誰かにとって利益になることや都合のいいことがある。それはマインドコントロールという対人レベルからメディアの操作、社会的な洗脳まで、マジシャンのミスディレクションのように様々な形で巧みに私たちの生活の中に気づかれないように織り込まれている。
だからこそ、私たちは自分がリアルタイムで何かを感じたり、揺さぶられたりしたことに対して、そこに固定化の罠はないか、さまざまな角度から検証したり、わが意を確かめていくことで、「まなざしを更新しつづけ」る必要があるのではないでしょうか。
今週のおうし座は、おのずと「自分の人生を生きるのは誰か?」ということを改めてみずからに問いかけていくことになっていくはず。
おうし座の今週のキーワード
もはやさ迷い歩くな