おうし座
人道は水車にあり
他力の美しさということ
今週のおうし座は、「不自由な芸術」としての日用品のごとし。あるいは、使い捨てが当たり前の時代にあって、その流れに全力で抗していこうとするような星回り。
日本にはもともと「モノには魂が宿る」という考え方がありましたが、日常の道具の美しさを指摘した最初の人物である柳宗悦は、「人間の真価はその日常の暮しの中に最も正直に示される」という考えから民衆的工芸を「民藝」と名付けました。柳は日用品の本質について、『手仕事の日本』の中で次のように説明しています。
いわく、実用ということに縛られて作られた日用品は自由な美術が尊ばれた時代において「不自由な芸術」と呼ばれたものですが、不思議なことに「かかる不自由さがあるために、かえって現れてくる美しさがある」のであると。
それはなぜかと言うと、「不自由とか束縛とかいうのは、人間の立場からする嘆きであって、自然の立場に帰って」見てみれば、「用途に適うということは必然の要求に応じる」ことであり、「材料の性質に制約せられるとは、自然の贈物に任せきる」ということでもある。つまり、「人間からすると不自由」でも「自然からすると一番当然な道を歩く」ことを意味し、そこには人間を越えた力としての「他力の美しさ」が宿るのだ、と。
人間の身勝手やわがままが行き過ぎなところまで押し進められてしまったことでそのしっぺ返しを受けている現代社会において、自力で立つ美術品ではなく、こうした他力という視点から日用品を捉え直し、実用に美しさを交えていくという考え方はまさに時代を先取りしたものだったと言えるかも知れません。
6月26日におうし座から数えて「流儀」を意味する6番目のてんびん座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、改めて生活に美しさを結びつけていく上で、コスパや効率重視の考え方をどれだけ生活の中でひっくり返していけるかどうかが問われていきそうです。
逆らいつつしたがい、したがいつつ逆らう
日本人の思想伝統では、あらゆるものが「おのずから成るもの」として尊重されてきた訳ですが、と同時に、人間は他の動物と違ってそうした「おのずから」の状況環境を「みずから」の働きに則して展開していくという不思議な二重性があるところにこそ生命力の躍動(=たましいの働き)を感じてきたのではないでしょうか。例えば、それは次のような一文の中にも見出されます。
それ人道は、たとえば、水車のごとし。その形半分は水流にしたがひ、半分は水流に逆うて輪廻す。丸に水中には入れば廻らずして流るべし、また水を離るれば廻ることあるべからず。(『二宮翁夜話』)
ここで言う「水流」とは、いわば物事のおのずからの働きのことですが、逆にみずからの働きはそれに丸ごと従うのでもなければ、それから離れてそれを一方的にコントロールするというのもでもない、そのあわいにおいて初めて成立してくるものなのかも知れません。
今週のおうし座もまた、コントロール欲を放棄しつつも、特定の誰かや組織と関わっていくちょうどいい塩梅に当たりをつけていくべし。
おうし座の今週のキーワード
「みずから」と「おのずから」のあわいに立つこと