おうし座
正常な体験を耕す
正常な体験の方が…
今週のおうし座は、体験の沃野(よくや)を耕していく農家のごとし。あるいは、“平凡な”規則正しさを“ノーマル”な生活にもたらしていこうとするような星回り。
「ミニマル・ミュージック」を提唱する現代作曲家のひとりであるジョン・アダムズは、2010年に行われたインタビューの中で「毎日午前九時から午後四時か五時くらいまで仕事をする」が「僕の経験からいうと、本当に創造的な人々の仕事の習慣はきわめて平凡で、とくにおもしろいところはない」と話しており、「基本的に、なんでも規則正しくやれば、創作上の壁にぶちあたったり、ひどいスランプに陥ったりすることはないと思っている」と断言してもいます。
とはいえ、何かと誘惑や邪魔の多い日常生活において何かを「規則正しく」やり続けることほど難しいことはないはず。そして難しいことをこなせるようになるためには(しかもごく平凡に見えるように)多大な訓練が必要ですが、多くの場合、私たちは病気や事故などに直面するまで、日常生活を送るのに特別な訓練が必要であるとは考えません。それでも、そうした事情について精神科医の中井久夫は次のようにも述べています。
異常体験というものは実はかなり類型的なものであり、そうでない体験のほうがはるかに豊富であり、分化しており、多様である。
日常生活を規則正しくこなしていく訓練とは、まさにこうした多様な経験の実る土地に分け入っていくことに他ならないでしょう。その意味で、5月20日に自分自身の星座であるおうし座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、アダムズのようにさまざまな創造性の現れを経験していくべく、まずは少しずつ土地をならして耕しつつ、自分なりの「規則正しい生活」を改めてデザインし直していくことがテーマとなっていくはず。
自然は乱数的であるということ
アダムズは一方で、単に規則正しいスケジュールを機械のように守るだけではなく、「必要以上に計画しないようにして」おり、ときには「あきれるほど無責任な状態にいる必要」もあるのだとも述べています。
これはまさに「正常」であるということの豊かさや多様性を耕すために必要な“あそび”であり余白づくりとも言えます。例えば草むらを漫画で描くとき、一本一本の草を規則正しく並べすぎるとかえって不自然に感じる一方で、時おり欠けやねじれや折り重なりなどがあった方がかえって自然に感じる感覚とも似ているかも知れません。
そして今週のおうし座もまた、そんな風に普通の体験を根気強く、ときに気ままに耕し、発展させていくことを心がけるといいでしょう。
おうし座の今週のキーワード
本当に創造的な人々の仕事の習慣はきわめて平凡で、とくにおもしろいところはない