おうし座
もの好きは時代を超えて
自分にとっては当たり前のこと
今週のおうし座は、「私はビンスキですから」という自負のごとし。あるいは、「これがいい」という素直な気持ちを表現していこうとするような星回り。
古美術愛好家のあいだでは、時おりみずからのことを指して「ビンスキ」という言葉が使われます。これは「貧乏数寄者」の略で、しかしだからといってそこに悲壮感や卑屈さはなく、むしろ得意げなことの方が多いのだとか。
そこでは美術館や富豪のようなコレクションはないが、個人が手にするのに分相応の、それでいて隠れた名品を掘り出すことができる目利きであり、あくまで投機目的ではなく、美を楽しむために古美術と接しているのだという自負が見え隠れするのです。
そんなビンスキのあいだで人気があるのは、仏像などの残欠類で、仏の衣の一部分や、手足の先、光背や台座を装飾する蓮弁など。それらは普遍的なものを限りある形であらわした仏像の一部であるためか、一部でありながらそれ自体で完形の彫刻のように思えてくるから不思議で、そうしたものが時代を超えてみずからの元に転がり込んでくる偶然を何よりも愛好するピンスキたちの感性は、「わび」「さび」「あわれ」などの言葉で伝えられてきた日本の伝統的な美意識が結晶化しているようにも思えます。
同様に、6月21日におうし座から数えて「言語化」を意味する3番目のかに座に太陽が入る夏至を迎えていく今週のあなたもまた、「私は、私が欲しいものしか欲しくないのだ」という至極当然のことを、当たり前に表現し、伝えていくことを試みるべし。
日本語の成立過程
日本語の仮名文字(ひらがな、カタカナ)を母音に基づいて縦に五字、子音に基づいて横に十字ずつ並べた「五十音図」の出来上がった過程を振り返ると、まず平安時代にその原型ができて、それを江戸時代中期までに完成させていくのですが、その立役者は真言のお坊さんたちでした。
例えば、五十音すべてを重複させずに使って作られた「いろは歌」冒頭の「色は匂へど散りぬるを」は「香りよく色美しく咲き誇っている花も、やがては散ってしまう」という意味ですが、ここからも日本語が「諸行無常」などの涅槃経の教えが溶かし込まれながら出来上がってきたものであることが分かります。
つまり国語や言葉というものは、決して初めから安定的に出来上がったものだったのではなく、それらを扱う私たち日本人と同じように、つねに揺れ動き、栄枯盛衰を繰り返しながら成立し、これからも移ろい続けていくものなのだということ。
その意味で、他ならぬ日本語こそ時代を超えて転がりこんできた偶然の産物なのであり、同様に今週のおうし座もまた、伝える内容だけでなく、伝え方自体にも自分なりの美学を反映させていきたいところです。
おうし座の今週のキーワード
偶然的運命を愛する