おうし座
緊張感と解放感のはざまで
「ほっこり」いろいろ
今週のおうし座は、「ああ、ほっこりした」とひとりごつ声の主のごとし。あるいは、重い拘束具を脱ぐかのように、自身を縛りつけるこわばりを解除していくような星回り。
ほっとして一息つくだけでなく、さらに心温まる気持ちになったことを「ほっこりした」などと言います。さながら「ホッカホカ弁当」のようでもありますが、「ほ」も「こ」も「り」もいずれも空気の擦れた音が連続するこの擬音表現は、どうも人に息をとことん吐かせるように出来ており、その点にこそ本質があるように思われます。
つまり、重い荷物を長いこと背負って下ろしたときの安堵感とともに漏れる吐息にしろ、これ以上のないというほど目まぐるしく忙しい一日をやっと終えたときの嘆息にしろ、とにかくそこには重たくなった身をほどいて羽を伸ばすときの解放感があるのです。
さらに語源に目を移してみると、「火凝る」つまり物を焼くという意味の他動詞の連用名詞形である「ほこり」に景気づけの促音「っ」をつけたのが「ほっこり」だという説があります。これはその「ほこり」の語幹「ほこ」を重ねた「ほこほこ」から「ほかほか」や「ぽかぽか」など南洋の太陽の下を感じさせる温暖な副詞や「日なたぼっこ」という言葉が生まれたことからも確かであると感じさせられます。
ちなみに、「ほっこり」に関しては「ぼける」「ぼんやりする」という意味の「惚く」という動詞の名詞形「ほけ」から「ほけあり」という形容動詞が生まれ、それが縮まったものという説もあるそうですが、こちらも真偽はともかく、可愛らしく、現代の若い女性がその意図で使い始めてもおかしくないという気がします。
21日深夜におうし座から数えて「サバイバル」を意味する3番目のかに座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、自分が生き延びていくための手段としての「ほっこり」という言葉の使い方やコミュニケーションを編み出していくことがテーマとなっていくでしょう。
ほんのすこしの勇気を
なんとなく嘘と分かっている嘘を思いきってシュレッダーにかける代わりに、無意識のうちに周囲に同調し、自分に対しても嘘を重ねるうちに、自分がどんどん萎縮していく。
そんなプロセスの中で鬱積していった本音や本能を一気に爆発させたら一体どうなるのか、それは誰にも分かりません。ただ、今週のおうし座の人たちは、どこかでそうした日頃の「無意識的な同調」のタガを外していくことがひとつの焦点となっていくはず。ただ、そうは言っても重く考える必要はないんです。足りないのはほんのすこしの勇気。
作り笑いにつかう表情筋を止める勇気。
無言でその場を立ち去り、足を止めない勇気。
そして何より、公然と自分の本音を言ってみる勇気。
それは一度振り絞れば、後で「何てことなかった」と言えるものばかり。きっと先の「ほっこり」という言葉も、そんなすこしの勇気をふり絞った後にこそふさわしい表現なのではないでしょうか。
できるだけ肩の力を抜きつつ、筋を通すためのきっかけを今週は意識して作っていくべし。
今週のキーワード
ほけあり