おうし座
苦闘、または自由への道
生命力の充実
今週のおうし座は、「戦後の空へ青蔦(あおつた)死木の丈に充つ」(原子公平)という句のごとし。あるいは、課題や難題を抱えているがゆえに自由という境地に立っていくような星回り。
戦後すぐの昭和26年の句。作者は当時東京の本郷に住んでいましたが、あたりは瓦礫の山なす廃墟であり、戦火で焼かれた樹木もさぞかし無惨な姿をさらしていたはず。
ただ、作者はそうした光景が広がるなかで、もはや屍となった木を這いあがる蔦(つた)を見つけ、死木(しぼく)の中絶したいのちそのものを受け継ぐように、青々と伸びてその背丈を覆うまでに茂っているさまに何かを感じたのでしょう。だからこそ、「戦後の空へ」という言葉をあえて意識的に選んだ。
小児麻痺で片足が不自由な身として生まれ、父や兄弟を幼くして亡くし、戦中戦後を母子ふたりで生き抜いた作者は、「戦中戦後の苦しい生活を、時には破滅する思いで過ごしてきた」と句集のあとがきに述べていましたが、なにも軍隊が兵器を持ち合ってドンパチやるだけが「戦争」なのではなくて、こうした生活者のひとりひとりがいつの間にか精神的・経済的な苦闘を余儀なくされていくような状態もまた、目に見えない「戦争」なのではないでしょうか。
それにも関わらず、掲句にはどこか地に足の着いた向日性があります。
2月18日に自分自身の星座であるおうし座に位置する天王星(覚醒)が土星(重い現実)と90度の角度をとって激しくぶつかっていく今週のあなたもまた、課せられた重荷に屈することのない生命力の充実にこそ“自由”を感じていきたいところです。
汚泥の蓮華
仏教の教えの中に、「蓮華は汚泥の中に咲く」という言葉があります。泥とは欲望であり、欲望がなければ蓮華も咲きはしない。この世は時に“どぶ”のように苦しい世界と感じられるかも知れません。
でも、どぶに落ちても、それを吸収し、正しい方へとそれを肥やしにできる人は、いつか蓮華を咲かせるのです。
なんとなく「まみれる」ことを避けたい気持ちが出てきたら、いずれ自分のもとに咲く蓮華のことを思いましょう。ひとしきりそのイメージを描いたら、改めて汗やほこりとともに、泥にまみれていくべし。
今週のキーワード
煩悩の汚泥を肥やしとする