おうし座
ヒトとしての可能性を開く
身体を貫く思い
今週のおうし座は、「冬晴やわれら系統樹の梢」(倉田明彦)という句のごとし。あるいは、進化における大いなるギブ&テイクに目を見開いていくような星回り。
作者は長崎の開業医。目の前に立つ一本の枯れ木のなかに、われら人類(ヒト)を梢とする壮大な生命進化の歴史を見ているのでしょうか。
38億年の原始の海に存在した細胞を祖先とし、多大なる時間をかけて多様化してきた生命の歴史は、弱肉強食の適者生存の単なる繰り返しというよりも、すべての生き物が共有しているゲノムDNAの展開であり、分かち合い、そして関わり合いの物語と言えます。
掲句ではそれが単なる紙の上のアイデアとしてではなく、現実の光景のなかにホワーンと浮かび上がってきているのです。
昨今の情勢やAIの進化進出によって、人類(ヒト)はいまの種としてのたそがれ時を迎えているように思えますが、それでもとりあえずまだ晴れて明るいのだ、と。
29日におうし座から数えて「仲間意識」を意味する11番目のうお座で約5カ月ぶりに海王星が順行へ戻っていく今週のあなたもまた、さまざまな垣根や軋轢をこえて自分が周囲に助けられていること、逆にしてあげられることなどに目を向けていくといいでしょう。
本気と書いて狂気と読む
自衛隊の駐屯地で割腹自決した最期の印象によって、どうも狂信的な右翼といったイメージがある三島由紀夫ですが、彼の書いた小説を読んでいると、この人はただ子どもが宝物を集めるようにして、ひらすらに美しいものを求めていっただけだったのだろうということがわかるような気がしてきます。
例えば、1962年に宇宙人視点で地球や人間について書いたSF小説『美しい星』では、次のようなセリフが出てきます。
「早く人間よ、滅びてしまえ!」と銀行員は、醜くひらいた鼻孔を見せて、呪詛の祈りをはじめた。「生れると忽々(こつこつ)、糞尿のなかをころげまわり、年長じて女の粘膜にうつつを抜かし、その口はいぎたない飲み喰いと、低俗下劣な言葉と、隠しどころを舐めることにしか使われず、老いさらばえて又再び糞尿のなかをころげまわる、人間という穢らわしい存在よ、一刻も早く滅びてしまえ!嫉妬と誹謗に明け暮れて、水と虚偽なしには寸時も生きられぬ、人間なんぞ早く滅びてしまえ!汚れた臓物にみちみちた、奇怪な皮袋をかぶった存在よ、もう我慢がならん、滅びてしまえ!消えて亡くなれ!」
何を美しいと思うかなんて、その人の信念でしかない訳です。それもとことんまで行けば信念というか、結果的に時代を超えて誰かに届いていくこともあるのではないでしょうか。その意味で、今週は自分なりの美学を、時代を超えた誰かや何かとのつながりの中で見出していくことができるかも知れません。
今週のキーワード
「何とかやっていくさ、人間は」