おうし座
未来に戻ろう
過去の要請に応答せよ
今週のおうし座は、ポール・ヴァレリーの「我々は後ずさりしながら未来に入っていくのです」という有名な一節のごとし。あるいは、自分と自分との隙間を見通していくような星回り。
今からちょうど100年前。第一次世界大戦中の1918年から始まったスペイン風邪のパンデミックは、1920年に終息するまで世界中で極めて多くの死者を出しましたが、同じ頃にヨーロッパの精神的没落に警鐘を鳴らした『精神の危機』を書き、大きな反響を呼んだ人物がポール・ヴァレリーでした。
そこでもヴァレリーは5000年とか1万年といったスケールで、「精神」と呼ばれているものの役割について構想してみせましたが、別の講演録で次のように述べている箇所などはいまのおうし座にとって感覚的に近しく感じるところがあるのではないでしょうか。
「しばらく前に、私のところに人がやってきて、生活がどうなるか、半世紀後の生活がどうかるか、私の意見を聞きたいと言った。私が肩をすくめたので、質問者は質問の射程を小さくし、言わば値下げして、私に問うた。「二十年後は、どうでしょうか?」私は彼に答えた。「我々は後ずさりしながら未来に入っていくのです……」、と。」
22日におうし座から数えて「中長期的な見通し」を意味する11番目のうお座で上弦の月(行動の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、みずからの過去の要請を改めて振り返って、それに応えていくことで、少し先の未来を思い描いていくことがテーマとなっていきそうです。
悲しみセラピー
17世紀オランダの哲学者スピノザは、人間は自然の一部であり、したがって自然を超えることはできない、という「自然一元論」の立場をとっていたことで知られていますが、彼によれば現代社会のように自然の一部を勝手に「無害」「危険区域」等とレッテル貼りをして、人間の一方的な都合に基づいた行動を正当化することこそ、自己破壊であり、悪に他ならないのだと言えます。
こうしたスピノザの立場をより身近な対人関係に置き換えていくとき、彼の紡ぐ言葉はそのまま「弔い」における実践的指標を表し、私たちを自己治癒へと促してくれます。
自分の憎むものが否定されるのを想像するとき、人は喜びを感じる。だが、人は、自分の憎んでいるものが破壊されたり否定されたりすることを想像するとき、心から喜ぶことはできない。
なぜでしょうか。その理由として、彼は次のような一言を提示しています。
われわれの憎むものが否定されたり、他のわざわいを被ったりするのを想像して生じる喜びは、必ず心の悲しみを伴っている
今週のおうし座もまた、自分を自分の手で癒していくために、まず過去の自分が抱えたままでいる悲しさを、改めてしみじみと感じ直していきたいところ。
今週のキーワード
喜びと悲しみの複合感情こそ鍵