おうし座
私が話すように物事が創造する
たまたまできた詩
今週のおうし座は、18世紀中国の詩人・袁枚(えんばい)の「偶然作」という漢詩のごとし。あるいは、たまたま読んでたまたま書いた言葉に自身で納得していくような星回り。
清代の文人である袁枚(えんばい)は、24歳という異例の若さで科挙に合格したものの、田舎まわりの生活に嫌気がさして38歳で隠遁した後は、「随園」と名付けた庭園のある邸宅に隠遁したとされています。
彼は美食でならし、各地の食材や料理のレシピについて綴った『随園食単』によって、「西のサヴァラン、東の随園」と言われるほどに歴史的にも有名な人物ですが、その本領とするところはやはり詩文でした。
彼には「偶然作」すなわち「たまたまできた詩」という、漢詩にはお約束のタイトルの詩があり、賭け事以外の遊びにことごとく手を染めてきた自分が、ある日を境に変わってしまったことを次のように歌っています。
忽忽四十年 味尽返吾素
惟茲文字業 兀兀尚朝暮
すなわち「ところが四十になると 遊び尽してやっと本来の自分に返ったかのように、本を読むことが急に面白くなり、毎日ひたすら読書にばかり明け暮れるようになった」と。
10日におうし座から数えて「ものの弾み」を意味する3番目のかに座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、そんな一節を書いてその通りに生きてしまった袁枚のように、自分が今それを生きつつある変化に思い当たっていくことになるでしょう。
発語の成熟
今週は「言霊」ということについて真剣に考えてみるのもいいかも知れません。奈良時代の語彙を収集した『時代別国語大辞典上代編』(三省堂)には「言霊」について、次のように述べています。
ことばに宿る霊。ことばに出して言ったことは、それ自身独立の存在となり、現実を左右すると考えられた。名に対する禁忌の心持とも共通する信仰・感覚である。
ふだん自分が口に出して言っている言葉だけでなく、PCやタブレットを開いたときになんとなく打ち込んで検索している言葉、LINEで最近よく使っているスタンプなど。それらを改めて見直した上で、自らの存在価値をその上に置いていきたいと心から思えるような言葉を定めて、自覚的に口に出し、打ち、書いてみる。それをここでは仮に「発語の成熟」と呼びたいと思います。
そうしたきちんと成熟した発語は、繰り返される度に人生という現実にしっかりと根を張って、やがて立派な大樹となれば、あなたの品位を傷つける乱雑な言葉から守ってくれるようになるもの。できるだけ、等身大の自分に馴染む言葉を見つけてみてください。
今週のキーワード
アブラカタブラ