おうし座
ずっきゅんエントロピー
解き放たれるとき
今週のおうし座は、「輪に入りてすぐ影が添ふ盆踊」(三好潤子)という句のごとし。あるいは、小さな自分がより大きな何かに包まれていくのを感じていくような星回り。
今ではあまり身近なものではなくなってしまいましたが、俳句において「踊り」と言えばそれは盆踊りのことを指します。
同じリズムの中でみなが一緒になって体を動かすうちに、だんだん疲れて、自分と他者との境界がほぐれ合って一体となっていく。その気持ちよさはある種独特のものがあります。
一方で、みずからにまといつく数多の業は、その眼が醒めていれば醒めているほどに淋しく悲しい。その淋しさ悲しさは、だからこそ、昂ぶる心に身を任せることでかろうじて癒されていく。
醒めた眼から昂ぶる心へ、昂ぶる心から醒めた眼へ。作者はこれまでもそうした反復を繰り返しつつ、その繰り返しのつどに、命の輝きとも言うべき生の実感を感じてきたのかも知れません。
8月4日におうし座から数えて「共鳴的な行動」を意味する10番目のみずがめ座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、自分のなかの淋しさ悲しさを癒すために必要な「輪」がどこにあるのかを、改めて痛感していくことでしょう。
あえて不安定さをつくり出す
この場合の自分を包摂してくれる「より大きな何か」とは、例えばエントロピーのようなものでしょうか。
エントロピーとは「混沌」の意で、宇宙の大原則として、あらゆる物事はエントロピーが増大する方向にしか動いていきません。秩序あるものは時間の経過とともにカオティックに混乱していき、一点に集まったエネルギーもやがては分散していく。つまり、いくら整理整頓した机も散らかるし、熱烈な恋もいつかは冷めてしまうのだと。
そんなエントロピーの増大に絶え間なく抵抗しているのが、すべての細胞を入れ替え続けることで死を免れて「生きて」いる人体であり、生命の働きなのです。
つまり、生命はつねにエントロピーに従いつつも、時に逆らうことを繰り返しているのです。さらに興味深いことに、生命は細胞が自然に壊れる前に先回りしてみずからを壊し、その不安定さを利用して新しい細胞を作り出す活動をしているのだそう。
これは人生レベルに置き換えれば、基本的にはエントロピーに従って老化や衰え、限界や死などを受け入れつつも、下手に落ち着き過ぎることなく、ときどき羽目を外し無茶をして、強さや若さ、しぶとさやみずみずしさを湛えた自分へと生まれ変わるためのチャレンジをしていくということ。
そしておそらく、そうしたチャレンジというのは、やがて必ず訪れる生命の終わりを深く感じている人ほど可能になっていくはず。
今週のキーワード
細胞の入れ替え