おうし座
転換と噴出
蛇神の仕組み
今週のおうし座は、水流豊かな地に置かれた十一面観音像のごとし。あるいは、目に見えない混沌が自分の中から噴き出してくるような星回り。
奈良時代に日本で仏像が作られ始めた頃、日本人がもっとも好んで作ってもらっていた仏像の一つが十一面観音でした。それがどういう所に祀られていたかと言うと、ほぼ例外なく水源地か、水流の合流地点、とりわけ渓谷の源流地でした。
つまり、仏像が置かれる前には蛇の神や龍神が棲んで守っていた土地であり、そこに仏教が入って、より人間の言うことを聞いてくれる仏像になり代わっていったのです。
十一面観音像の頭からたくさんの仏像たちが湧いてきているのも、蛇がその内に秘めていた目に見えない自然の力のうごめきが、物質の世界に転換されてくる特殊な磁場=聖地において水流として噴き出してきている様子を想像すれば、その意味が分かるのではないでしょうか。
インドでは、心の内面が心臓から頭のてっぺんを通って悟りの力として昇華されていくものと考えられましたが、十一面観音像もそのままでは混沌としている自然の力が、人間に慈悲を与えてくれる仏像の顔となって立ち現れているという仕組みです。
23日におうし座で新月を迎える特別なタイミングに入っていく今週のあなたもまた、自分自身をひとつの聖地として見立てて、そこで目に見えない力の流動が自分の身を通して転換されていく様子を思い描きつつ過ごしてみるといいかも知れません。
自分という大地を耕す
それはさながら、自分という大地に透明な植物の芽が生え広がっていくようでもあります。そしてそうした転換を促していくためにも、燦々たる日の光を背に浴びつつ、固まった大地を耕していくことが大切になってくるはず。
狭い世間の中で人と自分とを懸命に比べているあいだにも、中天を太陽がゆき、月が闇夜をゆき、時がこの身体を通り過ぎていく。しかしだからと言ってやみくもに動きまわり、焦ってしまえば悩みはますます深まり、空を覆う雲も暗く厚くなるばかり。
心の中にたなびいている嫌な気持ちを払うには、手を休めず、自分という大地を日々黙々と耕していく以外に道はありません。大地を耕すとは、すなわち花や詩、光や音楽を通して自分に働きかけていくということ。逆に耕すことなくば、大地はいよいよ冷たく固まり、頭上の噴出はやがて無明の中に閉じていくことでしょう。
あなたのまわりには、みずみずしさや、たっぷりの滋養を感じさせてくれる人はいますか?あるいは、そうしたものを与えたくなる人は。生きている人であれ、亡くなった人であれ、互いに耕しあえるような関わり合いの中で、今週あなたの中には目に見えない芯のようなものが形成されていくのだと言えます。
今週のキーワード
透明な芽生え