おうし座
夢を育てる
胎児の羊水呼吸
今週のおうし座は、舌なめずりする生後三か月の胎児のごとし。あるいは、実現可能な夢を見ていくような星回り。
胎児は生後3か月もすると、身長はわずか4センチながらも一人前に舌なめずりを始め、羊水に舌つづみを打つのだと言う。
そして来る日も来る日ものどを鳴らしてこれを呑み続け、さらには胸いっぱいに吸い込んでしまう。肺の袋に羊水を流し込んでは、それを吐く。胎児のこの「羊水呼吸」は、それ以後、出産に日までえんえんと続けていくのだそう。
その姿は、どこか太古の海を遊泳した魚類のエラ呼吸を思わせはしないだろうか。そしておそらく胎児は、出産時に脊椎動物の上陸劇を再現しているのであり、羊水呼吸を始めた頃からそうした地球上の生物進化の夢を見始めるのだ。
12月3日(火)に「拡大と発展」の木星が約1年ぶりに星座を移り、おうし座から数えて「探究と冒険」を意味する9番目のやぎ座へ入っていく今週のあなたも、かたちこそ異なれど、自分なりのやり方でそうした壮大な進化の夢を改めて抱いていこうとするだろう。
「if」を大切に
個人史であれ、人類史であれ、歴史というものはすべからく死者との絆でもあります。歴史を繋ぎとめ、人の想像力を最も力強く喚起するのは、生きて目の前にいる者ではなく、むしろ死者の方なのです。
胎児が子宮の中で進化の歴史をなぞり、魚類や両生類の悲願を追体験していくように、魂の歴史における死者とは、さながら結実することのなかった思いや、成就することなかった願いなのだとも言えるでしょう。
死者らの声をふさぎ、埋めてしまうことで意図的に忘却をはかるのではなく、死者を追悼し、彼らに祈り祭るすべての行為は、過去から現在へ死者を繋げていくということであり、そうしたプロセスのもとでしか、実現可能な夢は夢見られないのではないでしょうか。
その意味で、歴史に「if」は禁物だと言いますが、それは大間違いです。「実際に起こったこと」の下に隠された、幾つもの「実際には起こらなかったこと」もまた、確かな過去であり、尊重し受け継ぎべき鎮魂すべき死者の想いなのです。
自分自身の想いであれ、自分と関わる他者の想いであれ、今週はそうした想いを丁寧に掘り起こしていく時間を大切にされてください。
今週のキーワード
死者との絆