おうし座
欲と艶
情動の奔流
今週のおうし座は、「あゝ亜麻色の初花のともぐひ」(加藤郁乎)という句のごとし。あるいは、「私は私が欲しいものしか欲しくないのだ」と喝破していくような星回り。
「亜麻色の初花」とは、おそらくドビュッシーが前奏曲集第一巻の8番目においた初々しい少女趣味の結晶のような一曲のタイトルから取られたものに違いないでしょう。
さながら二茎の花が夏の夜風になぶられて、艶めかしくそよいでいるような風情が浮かんでくる句ですが、こうした句に関しては、そこに夭桃たる色と匂いを感じとったなら、後は虚心に口ずさんでいくべきもので、それ以上は無粋と言わざるを得ません。
しかし、30日(金)におうし座から数えて「情緒の解放」や「精神の浄化」を意味する5番目のおとめ座で新月を迎えていく今週のあなたならば、こうした詠嘆的でありながらどこか曖昧模糊とした暴露の重層性や複雑さにどこか腑に落ちるものを感じていくことができるはず。
その際、意味や理屈から遠いところで自分を突き動かしていくものの奔流に逆らわずにいられるかが1つの鍵となっていくでしょう。
洗練と率直さのはざま
吐息や嘆きを直接的に発するのではなく、ポーズを取ることはナルシシズムであり甘えであり、すべてをわが身わが想いへと向かわせるセルフセントリックな振る舞いと言えます。
しかしそれさえも、人を魅了するだけの「艶(つや)」があれば、いちいちそれを咎める輩は現れないものです。
たとえば、三好潤子の「すねて行く緑陰深きところまで」や「香水の香を脱ぎたけれ男来て」といった句などは、艶なる自分を見せることのほかに自分を保つすべがないかのようにさえ感じられると同時に、私情を句の世界に持ち込む率直さや大胆さにはやはり目を見張るものがあります。
今週のおうし座のあなたにもまた、そんな彼女と負けず劣らず、何らかの洗練された形式を通じて自分の欲求を誰かに伝えたいという人間臭い欲求が不意に勢いづいてくるタイミングがきっと訪れることでしょう。
今週のキーワード
色と匂い