おうし座
理性の超克
近代化の相対化
今週のおうし座は、ハンナ・アーレントの語るような<共通感覚>を活性化させていくような星回り。あるいは、内省的な理性にとって、代わるべきものを見出していくこと。
ひたすら効率を追求し、生きた自然との繋がりを失ってしまった人間のあり様について、哲学者のハンナ・アーレントは「結果を計算することしかできない動物」と呼びましたが、その際「共通感覚を奪われた人間とは、しょせん、推理することのできる、<計算をする>ことのできる動物以上のものではない」(『人間の条件』)という言い方をしていました。
つまり彼女は、<共通感覚>によってこそ、人間は生きた自然との繋がりを取り戻し、人と人とがこの世界について共有していくことが可能になっていくものと考えた訳です。
この<共通感覚>とはすなわち、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の五感を統合するものとして、まったく私的な感覚作用を持つにすぎない五感を共通世界に適合させていた感覚のこと。
今や人びとがすべてのリアリティーから遮断されて自分だけを感覚する「精神が精神と戯れる遊び」の中に自閉するようになって、こうした共通感覚はめっきり後退してしまったのだと指摘してみせたのです。
太陽がおうし座入りする直前のタイミングで満月を迎えていく今週のあなたは、こうして近代化された精神の時代を生きる人間のひとりとして、自分たちから失われてしまった生々しい体験の強度やその共有の可能性について、改めて考えを巡らせていくことになるでしょう。
闘争と自由
例えばパブロ・ピカソは史上最も成功した画家である一方で、一生で何度も違う絵描きになったと言われていますが、それは一般的に想起される個人の成長過程、すなわち「近代人」の枠組みから彼が大いに逸脱していた何よりの証拠と言えるでしょう。
「わたしは発達などしない。わたしはわたしだ」
「絵は部屋を飾るためにつくられるのではない。私が古いもの、芸術を駄目にするものに対して絶えず闘争している」
といった彼の言葉からは、禅語の「日々是好日」に似た境地を感じます。
あるいは「ようやく子どものような絵が描けるようになった。ここまで来るのにずいぶん時間がかかったものだ」という彼の最晩年の言葉を聞くと、やはりピカソという人はただただ絵を描く喜びの中で自由自在にありたい人だったのだろうと思えてきます。
今週は、ともに童心に帰れるかどうかが大切な基準になるでしょう。まずは自分や相手の心臓の鼓動を感じようとしてみることです。
今週のキーワード
<共通感覚>