おうし座
さよならだけが人生さ
青春の門出
今週のおうし座は、「ポケットに全財産や春の旅」(西村麒麟)という句のごとし。あるいは、暗い自己欺瞞から目覚め、自己満足の外へと歩き出していくような星回り。
ポケットの中のわずかな現金が全財産。そんなシチュエーションは、大人になってしまうともはや遠い記憶の彼方のおぼろげな残像となってしまいがち。
しかし、4日(月)の立春そして5日(火)の新月と、新たな季節のスタートを一気に切っていくことになる今週は、そうした心細さと解放感とがないまぜになったかつての気分をこそ思い出していきたいところ。
はてしない自由と、かぎりない不安。このアンバランスさの上で、どうにか両足で立っていこうとするのが、若さというものの本質であり、旅立ちにふさわしい態度なのではないでしょうか。
だって、もし「安泰な青春」なんてものがあったとしたら、それこそ形容矛盾というものでしょう。
誰に批判されようと、どんな悪口を言われようと、それで自分の価値が減る訳でなし。むしろ、新しい人生を始めていくには、いったん不安定な状況に置かれることがどうしたって必要なのです。
今週は来たる3月6日(水)の天王星のおうし座入りと、約7年間のおうし座天王星時代へ向けて、本格的に始動していく最初の一週間となっていくでしょう。
過去の自分との惜別
かつていにしえの時代の旅人にとって、旅とは故郷や知り合いやこれまでの暮らしとの別れであり、もう二度と再会できないかも知れないという決定的な断絶を意味しました。
だからこそ旅立ちは「切ない」ものであり、そこには確かなカタルシスがあったのです。
ひるがえって、電話やネットでいつでも再会の機会を持ちえる現代社会では、目の前の誰かと「もう二度と会えないかもしれない」といった緊張感は極限までゆるんでしまっていますし、それに応じて「感情の強度」も薄まってしまっているように思います。
過去の自分とも、当然もう二度と会うことはないかもしれない。だからこそ、過去でも未来でもない、今ここの一点に集中する。そういった出会いと別れをめぐる現実の真実味を、今週は道の脇から拾い上げていくことになりそうです。
今週のキーワード
別れのカタルシス