さそり座
運命を感じる
蚕と共に生きようとする姿
今週のさそり座は、「青き地球蚕は糸を吐きつづけ」(野頭泰史)という句のごとし。あるいは、困難の惑星を生きる、我の未来へ祈りを捧げていくような星回り。
皇室では明治以降、代々の皇后が発から夏にかけて養蚕の作業を続けています。今年も5月の頭に皇后さまが最後の「山つけ」と呼ばれる野生のカイコの卵を、餌となるクヌギの枝に取り付ける作業をされたとニュースになっていましたよね。
明治期には生糸は重要な輸出品であり、当時の時代は産業奨励の意味があったそうですが、国内の養蚕業が衰退した現在は、文化の継承という側面が強くなっているのだとか。
もともと蚕は古代中国で人に飼われるようになって以来、人類とともに生き続けてきた昆虫であり、彼らがもたらしてくれた豊かさを糧にすることで私たちは栄えてきたのだと言えます。
ひるがえって現在、そんな悠久の歴史をすっかり忘れてしまったかのように、人類は我が物顔で地球を貪っていますが、これまでもこれからも地球は人類だけの所有物ではありません。
このことは、ちょうど、いまのさそり座の置かれている状況を象徴しているようにも思います。
蚕なんて気持ち悪いし、私の人生と何の関係もないよ、なんて思わないでください。
皇后さまが実際に手を動かしながら、自分の運命をそこに重ねていったように。あなたもまた、これまで自分を支えてきてくれたものと共に生きる未来を、時に応じて形を変えつつ思い描いていくことこそが、今週のテーマなのだと言えるでしょう。
クラリスの自作自演
偶然に現実を大きく左右されたり、流されたりしたとき、人はそれを「運命」と呼びます。ですが、今週のさそり座に求められているのはまさに「運命感覚」と言えるでしょう。
つまり、ただ「偶然」と呼んでいるときというのは、実際にはそれが本当に自分の未来に通じるものなのか、たまたま自分に降りかかったに過ぎないのか、判断がついていないのです。
その状態からは、自分や自分の人生についての確信めいたものは自分の内側からけっして湧いてきません。生きた心地がしないんです。
“運命”なんて言うと聞こえはいいですが、ある意味で「押し込み強盗」だと思ってください。ものすごくタチが悪くて魅力的な「ルパン」だと思ってください。気を抜くと、あなたもクラリスのように心まで奪われて、腑抜けにされてしまう訳です。
生きた心地を取り戻すためには、運命に対して可能な限りジタバタすること。意志を持つひとりの人間として、真っ向から逆らい、上から目線で運命を書き換える“フリ”をすることで、「運命とネゴシエーションする」のです。
クラリスは嘘泣きすることで運命感覚を深め、彼女なりに生きた心地を取り戻しました。さそり座にとって、強さとはそういうものなのかもしれませんね。
今週のキーワード
運命感覚