さそり座
流動体になっていく
行くべき道は破れかぶれ
今週のさそり座は、「破垣やわざと鹿子のかよひ道」(曾良)という句のごとし。あるいは、何かに誘われるように、ふらふらと繰り出していくような星回り。
曾良(そら)は芭蕉と一緒に『おくのほそ道』を旅した愛弟子のひとり。この句は、おそらく旅の2年後に詠まれた句だろうと思われる。
垣根の穴は、わざと小鹿が自由に行き来できるように開けてあるのだろう。どこかで、また旅に身をやつしてみたいという気持ちがくすぶっているのかもしれない。
むかしの旅は、今のように気軽なものではない。かなりの距離を足で踏破しなければならず、肉体的な負担も大きく、しかもいつ戻ってこれるか分からないため、仮住まいは畳まなければならない。
まさに後戻りできない人生の一大事だった訳ですが、だからこそ芭蕉や曾良はそんな旅をこよなく愛していたのでしょう。
今週のあなたもまた彼らのように、いつも通りの通勤路や移動ルートのどこかに風穴をあけ、自分を偶然に任せてみるくらいの行動に出てみるといいかもしれませんね。
旅路は風の通り道
風は目に見えず、あらぬ方向から吹いてくるし、すぐに方向を変え、予測や予断を許しませんが、古代ギリシア語では、そんな風のことをプネウマと呼んでいました。普遍的な実体としての「霊」のことです。
そして西洋哲学では、そんな風や霊がよどんで情念として沈殿した状態が、個別的な魂(プシュケー)であり、自分が自分であることの中核なのだと考えてきました。
そこでは、確固とした自分を持つことだとか、びくともしない業績を残すことが、崩れにくい「優れた個人」の見本とされてきたのです。
そういう意味で、今週はそういう価値観とは別の、もっとしなったり、情勢に応じてどこかへ流れていってしまうような、霊の視点に立って自分をシフトさせていくことがテーマなのだと言えるでしょう。
今週のさそり座へのキーワード
プネウマとプシュケー