さそり座
純心で感じる
心の襞(ひだ)
今週のさそり座は、「女の笑ひ夕荒れ波の襞々に」(西東三鬼)という句のごとし。あるいは、自分を忘れてしまうくらいに何かへ没頭してしまうような星回り。
作者の自註には、次のようにあります。
「伊勢湾のある浜辺で作った句です。時刻は夕ぐれで、海は次第に荒れてくるようでした。その波のひだとひだの間に、若い女の人が二三人立っていて、波が押しよせるたびに高らかに笑い声を上げていました。それは、おそれを知らぬ声でした。」
ローマ神話における美の女神・ヴィーナスは海の中から誕生したと言われていますが、作者はそれに近いもの浜辺の女たちを感じ取ったのでしょう。波間に対して使われた「襞(ひだ)」という言葉は、おそらくそれを受けとる作者の心の襞にも通じていたのでしょう。
そうして何かを深く感じることは、あらゆる表現に先立って行われるべき神聖な儀式であり、あらゆる良質な表現の根幹を成すもの。今週のあなたもまた、どうしたら内側にある思いを人に伝えていくことできるかを、自分なりに試行錯誤していくことになるはず。
まずは掲句の作者のように、おのれを虚空のようにして、何かに没頭してみるといいでしょう。
はなからの見当違い
「神をはやとちりする前に、
その純心でよく感じるのだ。
至聖なる愛の傍観と支援、
永遠の理想の父母を。
独裁者はいつだって我々の方だろう。」
(橋龍吾、『銀河飛行』)
何かに没頭できない人ほど、一生懸命に言い訳をこさえようとするものですが、そういうものは、はなから見当違いと割り切って、今週はなるべく捨ててください。
今週のキーワード
虚空