さそり座
マッドサイエンティストの心理
苦の中に楽あり
今週のさそり座は、さながらタロットの「隠者」のように、持ちうる全精力を投入して一つの難問を解き明かそうとする巣ごもり期間。何の気なしに正気とは思えない大変な根気仕事に手を出しがちな一方で、そうした難問に没入していくに従って、次第に無数の思考の萌芽と断片が、驚くべき密度をもって凝縮されていき、やがて漆黒の宇宙空間にまばゆい光を放つ一つの星の誕生を見てしまうような、決定的なタイミングの到来を予感させるものがあります。
もちろん根の詰めすぎは体に毒ですが、そうした時間の中で、どこか山奥の秘湯にひとり浸っているのと似た、社会的な抑制からの解放と、体の芯まで自然の霊力が浸透していく実感を、同時に得ていくことができそうです。
できるだけ家など安心できる環境で、ひとり静かに何かに打ち込む時間を大切にされてください。
破格の奇人変人を鑑に
注意すべき点があるとすれば、できるだけ身体や五感を使って、具体的な検証を通して直感的な気付きを洗練・結晶化させていくこと。
頭の中だけの考え事にならないよう要注意です。肉体の修練は精神の修練の基盤である、というのがヨガの考え方ですが、今週のさそり座にも同様の考え方が大切になってくるでしょう。
異能の博物学者・南方熊楠は、やはり那智の山中に籠って粘菌の研究に明け暮れていましたが、なぜ彼は異常なほどに粘菌に惹かれていたのか。柳田國男宛ての書簡には、次のように書かれています。
「粘菌は、動植物いずれともつかぬ奇態の生物にて、英国のランカスター教授などは、この物最初他の星界よりこの地に堕ち来たり動植物の原(もと)となりしならん、と申す。生死の現像、霊魂などのことに関し、小生過ぐる十四、五年この物を研究まかりあり。」
おそらく、熊楠にとって粘菌とは、まばゆい光を放つ星そのものだったのでしょう。
今週のキーワード
タロットの「隠者」、巣ごもり、ヨガの考え方、内なる炎をコントロールする、南方熊楠と粘菌研究、星の誕生