さそり座
これしかない
ようやくつかみ取った一句
今週のさそり座は、『鷹の巣や太虚に澄める日一つ』(橋本鶏二)という句のごとし。あるいは、「ここまで行ければ文句なし」と言えるような到達点を確かめていこうとするような星回り。
「太虚」はあおぞらの意。しかしこうした難語を、かくも壮大な句に自然と溶け込ませるのは、小手先のテクニックだけでは到底できないはず。
「鷹の巣」は春先から初夏にかけて、山地の高い樹上や断崖に作られるそうですが、そう言われてみると確かに、街中でふと開けた空を見たくらいで「太虚」という言葉を使うのは明らかに不自然であり、この句の醸しだしている壮大な雰囲気もまた、太虚という言葉に、鷹の巣があるくらいの深山幽谷がかけ合わさってこそでしょう。
そして、おそらく作者はそれをたまたま見つけて句にしたのではなく、俳人として修練に修練を重ねてきた長い年月をへて、掲句のような大楼閣をみずからの言葉で作り上げるだけの基礎を堅固にした上で、自身がそこでどうにか踏ん張れるだけの生きた文脈を得て、やっとものにできた句であるように思われます。
一生のうちに、こういう句をものにすることが何度かできたなら、確かにそういう人を俳人と呼んでも誰も文句は言わないでしょう。翻って、同じことを自分に置き換えてみたら、どうなるでしょうか。
5月8日にさそり座から数えて「一人前であること」を意味する7番目のおうし座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、そうした自分なりの「一人前」や「到達点」の基準を、ここで改めて設けてみるといいかも知れません。
揺るがなければそれでいい
山下和美の漫画『不思議な少年』では、あらゆる時代とあらゆる場所に現れては、「人間」を見つめ続ける「永遠の少年」の姿が描かれていきますが、その6巻に収録されている「THE MAN」というお話では、少年は神学校に潜入しています。
そこで、教師から「人類が手にした最も偉大なものはなにか?」と質問される。そして意識を縄文時代にまで飛ばし、とある青年の生活に密着することにします。
その青年が妹を殺された悲しみのあまりに咆哮した声がメロディとなるところを見届け、神学校に意識を戻して「歌です」と答える。
教師はそれを間違いとして、「人類の手にした最も偉大なものは信仰だ」と主張するのですが、少年の中ではこの答えこそが揺るがぬものとなっていくのです。
今週のさそり座もまた、誰かに話したり、書いたものを発表していくことで、やはり「揺るがぬもの」を作っていくことがテーマとなっていきそうです。
さそり座の今週のキーワード
誰も文句の言えない正解より、自分なりの真実を