さそり座
エモに彩られて
出会いの今昔
今週のさそり座は、『踏絵にて親しくなりし人の数』(中原道夫)という句のごとし。あるいは、思いがけないところで始まるからこそ情愛なのだと思い知っていくような星回り。
「踏絵」は江戸時代に春頃に行われていたキリシタン探しの行事で、そのまま春の季語として残ったもの。当然、現代人がこの季語を使えば、実際の景色ではなく空想を詠んだ句となるわけですが、にも関わらず妙な生々しさを感じさせるのが掲句。
踏絵で大勢の人がやってくると、行列がつくられたり、何かと袖が触れ合う機会も出てくる。それがきっかけで、縁ができて連絡しあうようになったり、カップルになった人もいるだろう。きっかけがきっかけだけに、皆あまり大っぴらに言ってないだけで、意外とかなりの数になるのではないか、と。
現代に置き換えれば、コロナ禍で表向きには不要不急な外出を控えるようにと言われていた時期に、反動でむしろリアルな接触を求めて外出したり、ネット上のたまり場でなんとなくやり取りするようになってお付き合いが始まったという人たちがいて、彼らがなんとなくその馴れ初めを語るのに後ろめたさを感じる心理にも似ているかも知れません。
とはいえ、本来の目的や建前とは違ったところで不意に情が動いたり、本音が漏れ出してしまうのも、今も昔も変わらない人の性(さが)というものでしょう。
2月20日にさそり座から数えて「ときめき」を意味する5番目のうお座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、頭で考えていたのとは違った方へと思わず手や足や腹や胸が動き出していくのを、まのあたりにできるかも知れません。
弱い関わり
これはさまざまな異なる言い方で言われることですが、人や出来事との出会いには動脈に乗ってくる出会いと静脈に乗ってくる出会い、あるいは強い関わりと弱い関わりの2つがあります。
前者は、周囲の見つけやすいところにいる相手に、自分から能動的に、明確な目的を持って出会っていくことで作り出されるものだったり、相手の意図や好意などが分かりやすい関係性のこと。
そして後者は、間接的なつながりの先にいる相手と、たまたま、ないし一回性の縁によって結ばれることで創り出されるものであり、相手が何を考えているのか、いまいち分からないような関係性のこと。もちろん経済的合理性という意味では、後者は不確かで信用ならない“役立たず”な訳ですが、そういう関わりを取り入れる分だけ人はエモに彩られて、より人間らしくなっていくものなのではないでしょうか。
今週のさそり座もまた、分かりにくさや微弱さの先にある豊かさに目を向けて、丁寧に、しかし時には大胆に自らを差し出していくべし。
さそり座の今週のキーワード
血液の循環の75%は静脈に依っている