さそり座
自分への帰り道
『暮れなずむ女』
今週のさそり座は、少女の頃の自分から引き継ぐバトンのごとし。あるいは、いきいきとした生命力をみずからに吹き込んでいくような星回り。
ドリス・レッシングが1970年代に女性の自己発見について描いた『暮れなずむ女』では、キャリア・ウーマンになるより結婚を選んだケイトが、末の子供がついに家を出て独り立ちしたのをきっかけに、四十代半ばにして初めての仕事につこうとしていました。
それはミセス・ブラウンではなくケイト・フェレイラとしての人生への旅立ちを認めるパスポートのようなものであり、そこで彼女はみずからをスケールダウンさせて中流階級の主婦たちの一員に見えるように着込んでいた古い服を脱ぎ捨て、セクシーで洗練された服を買いました。が、しかしケイトはすぐにそれに飽きてしまうのです。
彼女は職場で評価されていましたが、どうしてもみんなの母親的役割についてしまっていることに気付き、その発見によって彼女は落ち込み、神経衰弱になってしまいます。しかしこの精神的混乱のなかで、彼女はついに未来は昨日の続きではなく、おてんばで、怖いもの知らずで、貪欲で、もちろんセクシーでもあった少女のころに中断してしまったところから、再び始まるのだという真理をやっと悟ることができたのでした。
12月4日にさそり座から数えて「資産」を意味する2番目のいて座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、花の開花に遅すぎるということはないのだと思い直していくべし。
犬に引かれて
あたりが暗くなってきた夕暮れ時にパッと道を照らしてくれる街灯にホッと安心感を覚えたことは誰しも経験があるでしょう。
あるいは、あなたが握ったリードをグイと引いてくれる犬。そういう犬というのは、人間のエゴイズムをすべて受けいれ、ときどき主人の手に噛みつきながらも、夕暮れ時になれば「帰ろうか」と促してくれる自然なやさしさを持ち合わせているものです。
生きているかぎり、人は目に見えない首輪をはずすことなどできず、つながれた場所へと帰っていく他ありません。そういう悲しさと滑稽さのない混ぜになった感情というのは、人を迷わせもすれば成熟させもする。つまり、その人を試す試金石になるのだと思います。
今週のさそり座は、ささやかな楽しみや小さな幸福を求め、それを照らしてくれる「帰り道」を見つけたら、まっすぐに歩を進めていくこと。
きっと少女の頃の自分からのバトンの引き継ぎというのも、犬が帰り道へと引いてくれる感触とどこか通じるところがあるのではないでしょうか。そうであれば、「あ、こっちかな」と感じた後の一歩を踏み間違えないことが大切になってくるはず。
さそり座の今週のキーワード
無理なく誘導に身を任せる