さそり座
言行一致はさりげなく
「よき人」
今週のさそり座は、毒杯をあおいだソクラテスのごとし。あるいは、生活と言葉の一致をあらためて図っていくような星回り。
アリストテレスやプラトンといえば、私たちはどうしても学問の神様のような存在としてしか想像できませんが、彼らだって人並みの人間で、友達と談笑したりもすれば、酔っぱらったり遊んだりなど、生活にまったく哲学者らしからぬ部分があったはずです。
実際、アリストテレス自身も『ニコマコス倫理学』の中で次のように述べています。
われわれは徳が何であるかを知ることを目的としてではなく、よき人となることを目的としてこの考察を行っているのである。でなければ、それが無意味であろう。
しかし、実際はこうした行為をしないで、言論に逃避し、そして自分は哲学しているのであり、それによってよき人となるであろうと考えている人々が多いのであって、彼らのこうしたやり方はいわば注意して医者の言葉を傾聴しながら少しもその命令を守らない病人に似ている。
19日にさそり座から数えて「自己アピール」を意味する7番目のおうし座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、アリストテレスが言った意味での「よき人」となるべく、自身の振る舞いや暮らしの内実をただしていきたいところです。
さりげない連続性
例えば、すぐれた詩の特徴とは何か?という問いへの答えは、ただ言葉のパンチが強ければいいとか、物語が奇抜でなければならないということではなく、むしろ何がいいのか分からない程度にそれらが隠れているさりげなさや、その「連続性」こそが大切になってきます。
そして、それを強く感じさせてくれる作品のひとつに、荒川洋治の「見附のみどりに」があるのですが、ここではその冒頭部分を引用してみたいと思います。
まなざし青くひくく/江戸は改代町への/みどりをすぎる
はるの見附/個々のみどりよ
朝だから/深くは追わぬ/ただ/草は高くでゆれている
自分がある場所を通ったときの風景を、ただたんたんと描いているのですが、そのテンポが独特で、特別かつての戦争の時代や不幸や災難などとの比較を持ち込まずとも、まるで言葉の流れそのものの中に平和が宿っているように感じられてくるはず。
今週のさそり座もまた、ことさらに自己主張するのとは違う形で、自分なりの流儀を貫いていくことになっていくでしょう。
さそり座の今週のキーワード
徳とは、日常に隠れたリズムに宿るもの