さそり座
思いの連なりの中で
こちらは9月13日週の占いです。9月20日週の占いは諸事情により公開を遅らせていただきます。申し訳ございません。
感傷を超えた重みをまとう
今週のさそり座は、「墓を出て兵が月夜の芋を掘る」(小鷹奇龍子)という句のごとし。あるいは、自分のある部分を未来に向け変えていこうとするような星回り。
戦争を直接体験した世代の平均年齢が80歳をこえ、急速に少なくなってきているいま、「戦争はもうこりごり、そんな記憶は忘れたい」という気持ちよりも、「忘れてはなるまい」という願いや必要がとみに強まっているように思います。
この句もまた、そんな自戒の思いをもとに、ただしまだ戦後30数年の頃に詠まれたもの。飲み食いということは、人間の最も切実な現実的な願望であり、生まれてから死ぬまで私たちからついて離れないものですが、ここでは死んでもなお離れられない人間の姿を半ば幻想的な光景として描きだしています。
とはいえ、ここには単なる感傷を超えた重みがあり、戦後70余年という時の流れをたっぷり含んでわが身にのしかかってくるように感じる人も多いはず。
14日にさそり座から数えて「中今(なかいま)」を意味する2番目のいて座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、自分にとって切実な現実的願望を個人的なレベルだけでなく、世代的なレベルや社会的レベルにおいてもどれだけ深く自覚していけるかが問われていきやすいでしょう。
古代日本と現代の対比
目に見える戦争は起こらずとも、現在先進国では唯一、若年層の死因の第1位が自死となっている日本では、生を最後までまっとうすることなくこの世を去っていく若者たちのニュースはもはや珍しくありません。しかし、万葉集を見るとじつは古代日本においても、異常死者に対する哀悼を歌った「挽歌(ばんか)」が異常に多かったことに気が付きます。
刑死や変死、自殺、路上で病気や飢え、疲労などで倒れての突然死や事故死―。改めて異常死の問題が時代を超え、地域を超えて我が国で発生し続けてきたということを思い知らされる一方で、現代ではそうした事態に対する不安と恐れの感覚が乾ききったまま散り散りに断片化しており、古代社会のように儀礼として挽歌を制作し、彼らを鎮魂せんとする情熱が明らかに後退してしまったのではないでしょうか。
特に、万葉集では恋人やつれあい同士で詠まれた「相聞歌(そうもんか)」が挽歌において極まるということがしばしばあり、ひとり悲しむ追悼の場面において、胸乳(むなぢ)を突き破るような抒情が悲傷へと収斂していく精神の在り様を紡いでいくことこそが、彼らにとって最大の慰霊に他なりませんでした。
ひるがえって、今のあなたには、そうした悲傷の心情や喪失感を抱きうる対象はあるでしょうか。あるいは、あなた自身がそうした対象となってしまう可能性はあるでしょうか。
今週のさそり座は、そんな思案を巡らせていくにもちょうどいい頃合いのように思います。
さそり座の今週のキーワード
アートの根源としての慰霊と鎮魂