さそり座
もう一つの夢を見る
迫りくる悪夢への抵抗
今週のさそり座は、夢見るように思考するよう。あるいは、思考がひとつの夢へと変わっていくような星回り。
ひとは夢の中でなにものかを見、なにごとかを聞く。こうした夢見の幻覚は、あるいは知覚は、いったいどこから到来するのでしょうか。
例えば、ベルクソンは二つの段階からこの問いに答えています。第一に、ひとは睡眠中でも視覚や聴覚や触覚から逃れられず、傍らで焚火を起こせば夢の中でもそれとなく明るい世界を体験したり、暖かさを感じたり、パチパチと何かが弾ける音を聞いていたりする。
そして第二の論点は、こうした感覚のかけらたちを意味づけ、かたちを与え、夢の内容として紡がれるのは、いったい何によっているのかということ。いったい何が「未決定な素材にその決定を刻み込むことになる」のか。それは「回想」であると、ベルグソンは述べています。
つまり、夢とうつつは、記憶と回想を通じて混じり合うものなのだ、と。これは例えば、「いのち」の在り様について問い続けたベルグソン哲学の主要な概念である「生の飛躍」とは、いのちが見る夢に他ならず、「開かれた社会」とは、迫りくる悪夢に対抗するための、もう一つの夢であった、ということではないでしょうか。
17日にさそり座から数えて「記憶の深み」を意味する12番目のてんびん座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、目の前の現実をそれまでと異なる角度から捉えなおすための「回想」を積極的に行っていきたいところです。
「月の裏側」からの回想
たとえば、政治学者の丸山眞男は名著『日本政治思想史研究』(1952年)において、明治時代の初めに日本が西洋と対等になろうとしたのは、西洋に同化するためではなく、西洋から自分をよりよく守るための手段を見出すためだったということについて言及してみせましたが、こうした丸山の明治維新への洞察はどこか今週のさそり座の人たちのテーマと通底していくところがあるように思います。
文化人類学者のレヴィ=ストロースは、日本はヨーロッパと太陽塀の架け橋の役割を果たしつつ、ヨーロッパと似通っていながらも対極にある歴史を発展させてきたと考え、19世紀に起きた日本の動きを18世紀のフランスの動きと比較して取り上げつつ、日本の歴史を「月の裏側」に例え、丸山をそうした歴史に取り組む学者の一人に挙げました。
これはギリシャ、ローマ以来のヨーロッパの歴史を「月の表側」とした時、それは歴史の半面でしかなく、日本やアメリカなどの歴史の動きをその内側から洞察していくのでなければ、真の歴史理解には繋がらないという彼の考えの現れでもありました。
今週のさそり座は、まさに太平洋戦争のただなかで明治維新の本質を看破した丸山のごとく、自分が身を置く社会やコミュニティーの真実を内側から看破していくことが求められていきそうです。
さそり座の今週のキーワード
同床異夢