さそり座
自然な雑然
ズレをとらえる
今週のさそり座は、「春昼(しゅんちゅう)に体を入れて立ててをり」(あざ蓉子)という句のごとし。あるいは、心と体のバランスを整えていこうとするような星回り。
「春昼(しゅんちゅう)」は春の昼、その春特有のどかな時間の流れを指す言葉。ただ、掲句ではそこに「体を入れて」とあるように、まるでそんな語を空間を表わす言葉であるかのように用いています。
さながら、大人のからだ一つがすっぽりと納まってしまうくらいの巨大な水槽が、実際にここではないどこかにあるかのように。
それは作中主体である意識とはどこか別の領域へと体だけ切り離されて、体は体で自身を「立てて」いるのだと言うのです。これはどこか眠気を誘う春という季節のけだるい気分を、目の前の実景を詠む客観写生という俳句の伝統を離れて、純粋な言葉による組み立てのみで一句に定着させたことと併せて、見事に表現されているのではないでしょうか。
つまり、一見アクロバティックな離れ業をやってみせたように見せながら、その実、心と体がふわりの別の次元に離れつつ存在している感覚を至極まっとうに描いてみせているのではないか、と。
20日に太陽がさそり座から数えて「調整」を意味する6番目のおひつじ座に移動し、春分を迎えていく今週のあなたもまた、みずからの心身の訪れたかすかな変調をきちんと過不足なく捉えていくことがテーマとなっていくでしょう。
人は時おり別人になっていく
人に言われてみないとなかなか分からないことですが、例えば、天候や食事や運動量、果ては星回りなどちょっとした条件で体の在り様はガラリと変わってしまうものですし、逆に毎日同じ体調を維持し続けるなんてとてもじゃないけれど不可能な芸当です。
そして、時には前日までの自分とはまるで別人になってしまったような変化を遂げる瞬間があるもの。何かが一時的に乗り移ったのか、本当に別人になったのかは分からないけれど、とにかくそういうことがあるのです。
人は一生のうちに何人の別人になっていくのか。それはもちろん個人差があるはずですが、二人や三人ということは滅多になく、おそらく多い人で二十人弱くらいまでは行くのではないでしょうか。いずれにせよ微妙な変化になればなるほど、人に言われてみないと自分では気付かない。そして、私たちはそうした別人としてバラバラにある自分を無意識のうちでとりまとめ、統合しようとしていく。
今週のさそり座も、違和感と共にそうした変化に気が付くこともあるでしょう。統合のコツは、複数の自分間のズレや不一致が心地よく感じられるポイントをできるかぎり繊細に感じとっていくことです。
今週のキーワード
1/fゆらぎ