さそり座
月輪観
ムーン・リバー
今週のさそり座は、映画『ティファニーで朝食を』の主題歌「ムーンリバー」のよう。あるいは、予期された事態やチャンスに向け、目に見えないところでの秘密の準備をしていくような星回り。
ときどき、現実の何もかもが夢なんじゃないか、そんなふうに思えてくることはないでしょうか。けれど、そんな時に見上げた夜空に浮かぶ月を見ていると、あまりの生々しさに心打たれ、これだけは間違いなくリアルに違いないと思えてくる。他の何もかもが信じられなくても、これだけは信じてもいいのかも知れないと。
「ムーンリバー」を作詞したジョニー・マーサーも、おそらくそんな感覚を思い出しながら書いたのではないかと思います。曲の出だしを抜粋すると、
Moon river,wider than a mile (ムーン・リバー、この広く果てしない川よ) I’m crossing you in style some day (いつの日か、あなたを颯爽と渡ってみせる) Oh,dream maker ,you heart breaker (ああ夢を見させもすれば、心を砕きもする) Whereever you’re going I’m going your way (あなたが行くところならどこへでも、私はついて行く)
ここでは世の中の基準や、良いとか悪いとか決めつけられ、頭で意味づけられる以前の世界に生きているもう1人の<私>として「ムーン・リバー」が登場してきているようにも思えます。
今週はそんな自分にとってのムーン・リバーと静かに、力強く向き合っていく時間のなかで、自分もまた闇夜を照らしだす月のような存在になっていけるかどうかが問われてくるでしょう。
月天心
与謝蕪村の句に、「月天心貧しき町を通りけり」というものがありますが、これなどはもう1つのムーン・リバーと言っても差し支えないでしょう。
もともとは「名月や貧しき町を通りけり」だったものを、後から「月(つき)天心」へと変えたのだそうです。天心とは「空のまんなか」のこと、すなわち心のまん中のことでしょう。
当時貧しいというのは、ごく当たり前のことで、悪いことをせず額に汗かき真面目に働いていた(意味づけ以前の世界にある)人のことを指しました。そうやって懸命に生き抜いて、やっと休息できるという場所の上を月がサーっと渡っていく訳です。まことに、このようでありたいものですね。
今週のキーワード
意味づけられる以前のナマの世界