さそり座
奪回それは魂の自覚
※当初の内容に誤りがありましたので、修正を行いました。ご迷惑をおかけし大変申し訳ございません。(2021年1月25日追記)
落書き詩人の歌
今週のさそり座は、中華料理店のカウンターで鉛筆をなめて千円札に自分の名前を書き込む一人の東北出身の女中のごとし。あるいは、権威を奪回せんと爆弾を仕込んでいくような星回り。
冒頭の「女中」は、寺山修司が「落書学」というエッセイの中で思い描いてみせた一つの人物画ですが、それはかつて青函連絡船の待合室で、数少ない手持ちのお札の一枚ずつに俳句や短歌を書いて、それが人手から人手へと渡っていく姿を想像して愉しんだ寺山自身の分身だったのでしょう。
彼女にとって自分の名前は一行の詩なのであり、そのお札の一つ一つが、疎外され、無名であることを余儀なくさせられている境遇を転覆するために仕込んだ爆弾に他ならないのかも知れません。
経済発展によって世界中の人々の幸福の増進に資するであろうと多くの人々が素朴に信じていたグローバル資本の暗い本質を徐々に露呈し始めているいま、自分が自分であることを取り返すための署名は、いわば<詩的所有>という表現行為であり、コートを着る前に腰に香水をひとふりするような大人の嗜みの一つと言えるのではないでしょうか。
29日にさそり座から数えて「態度表明」を意味する10番目のしし座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、自分なりの方法で世間の関わり方やそのひっくり返し方を、行為を通じて具現化していくことがテーマとなっていきそうです。
必然性への直観
今週は「自信」ということについて考えさせられるような流れになっていくかも知れません。つまり今あなたは、自分がどんな自分で在ると確信しているのか。
その際、「(自分には無理かも知れないけど)ああなりたいな」とか、「(〇〇と思われるために)こう見せたい」といった願望にもとづいた自意識や、セルフイメージというのは、「自分がどんな自分で在るか」を覆い隠せはすれど、決して「自信」ということとは関係ないのだということはよくよく自覚しておくべきでしょう。
願望は願望でしかなく、魂の自覚(=本来の自信)とは別の回路なのですから。
人間関係で思わず足を掬われるような思いをしたり、さっさと何かを否定することで切り抜けたくなる困難に出くわしてしまうと、つい自分という存在そのものまでかき消されたような気がしてボーっとしてしまうかも知れません。
しかし一方で人間というのは、まったくもって不完全な存在であるがゆえに、「あるべくしてこうなっている」という必然性への直観を抱いていけるのではないでしょうか。
今週のキーワード
千円札に書いた名前よどこにいく