さそり座
生き様=死に様
腹をくくる
今週のさそり座は、「山碧く冷えてころりと死ぬ故郷」(飯田龍太)という句のごとし。あるいは、腹のなかみを洗いざらいぶちまけていくような星回り。
故郷・甲府について詠んだ句。といっても、どこかマイナスイメージから発想された故郷であり、みずからの終末の地というとらえ方です。しかし、そうすることがかえって故郷への愛着を強く引き出しているのでしょう。
作者の父・飯田蛇笏は二十四歳で文学の道を断ち、東京から戻って家を継ぐことを決心しましたが、作者自身は兄たちの相次ぐ死によって、決断をする十分な暇さえなく家を継ぐことになりました。
掲句には、そのあたりの鬱屈した想いも潜んでいるはず。ただ一方で、自分のありのままの想いを隠すことなくさらけ出しても、それを受け止めてくれるのは故郷しかない。まがりなりにも厳しい寒さに耐えながら生きて生きて、生き切ってきたんだ、という清々しさも感じている。それが「ころりと」という言葉によく表れているように思います。
22日にさそり座から数えて「魂鎮め」を意味する4番目のみずがめ座の始まりで木星と土星の大会合が起きていく今のあなたもまた、掲句の作者ほどではないにせよ、どこかで自分の生き様/死に様に対して腹をくくっていくことがテーマとなっていきそうです。
根なるもの
稀代の釣り師であり食通としても知られていた作家の開高健は『食の王様』のなかで、食欲・性欲・権力欲の三つをヒトの「根なるもの」と呼び、「たがいにからみあい、かさなりあい、ときには反撥しあ」いながらも、「おたがいに菌糸のようにからみあい、あたえあい、奪いあい」ながら無数の変奏を生み出さずにはいられないのだと述べています。
こうした開高の直観は、いのちの根源は果たして一つなのか複数なのか、という問いにまで通じ、いかに生きていくべきか、というテーマを巡っても力強い示唆を与えてくれるでしょう。
本質的に多数で、各々がバラバラに動いているのがいのちなのですが、例えば東北地方で今なお死者供養の踊りとして継承されている「鹿踊り」のように、或るひとつの宇宙的なリズムの中で同じ一つの奔流となることもあるのであって、そうした稀有な経験は大きな喜びと救いを与えてくれるのです。
そういうものに着目していくとき、さそり座のあなたもまた「自立か、依存か」「支配か、従属か」といった二者択一的な枠組みを超えて、大いなるつながりに開かれていくことができるのではないでしょうか。
今週のキーワード
宇宙的リズムの中で同じ一つの奔流となること