さそり座
重荷と難題
荷と信
今週のさそり座は、「身軽足軽、人を創らず」という言葉のごとし。あるいは、みずからの心を育んでくれる言葉や人物の気と繋がっていくような星回り。
この言葉は、戦国時代、今川の人質であった若き徳川家康の教育を任され、家康の才能をいち早く見抜いて深く愛し、その心を育んだとされる今川家の重臣・太原崇孚(たいげんすうふ)、通称「雪斎禅師」のもの。
家康は、普通なら逃げ出すほどの重荷を背負って生き切った人物としてつとに知られていますが、雪斎は「背負う荷がほとんどなくて、身が軽く自分勝手に生きている人などにひとかどの人物はいない」ということをよく分かった上で、あえて家康に対して次々と難題をおしつけるなどいじわるく接しました。しかし雪斎と家康はいま風の人間関係ではまったく想像のつかない、固い友情と尊敬で結ばれた絆を保ち続けたのです。
つまるところ、ひとかどの人物になる道は“誰か他の人物を尊敬することによって、その人物が背負っている荷が見えるようになり、自分もまた荷を背負うことを厭わない人間になっていくこと“にある。2人はそれを互いへの信をかけてやりきったということなのでしょう。
23日に太陽がさそり座に入ると同時に、さそり座から数えて「心の支え」を意味する4番目のみずがめ座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、家康ほどではないにしても、信と引き換えの荷を改めて引き受けていく覚悟を固めていきたいところです。
むずかしいことが好きにならなきゃいかん
日本を代表する批評家と数学者である小林秀雄と岡潔とが対談した『人間の建設』という本の冒頭には、次のようなやり取りがありました。
小林「学問が好きになるということは、たいへんなことだと思うけれども。」
岡「人は極端になにかをやれば、必ず好きになるという性質をもっています。好きにならならぬのがむしろ不思議です。好きでやるのじゃない、ただ試験目当てに勉強するというような仕方は、人本来の道じゃないから、むしろその方がむずかしい。」
小林「好きになることがむずかしいというのは、それはむずかしいことが好きにならなきゃいかんということでしょう。たとえば野球の選手がだんだんむずかしい球が打てる。やさしい球を打ったってつまらないですよ。ピッチャーもむずかしい球をほうるのですからね。つまりやさしいことはつまらぬ、むずかしいことが面白いということが、だれにでもあります。」
語っていることは違いますが、これは先の「身軽足軽、人を創らず」と同じことを言っているのではないでしょうか。
今週のさそり座もまた、「むずかしいことを好きになる」ということをどうしたら実践していけるかということに、自然と通じていきやすいでしょう。
今週のキーワード
固い絆の秘訣