さそり座
魔法の杖となる
神気に身体を貫かれる
今週のさそり座は、「日光月光すずしさの杖いつぽん」(黒田杏子)という句のごとし。あるいは、自分の拠りどころにスーッと光が当たっていくような星回り。
昼は日の光のなかを、夜は月の光のなかを、涼しげな杖1本だけを頼りにひたすら厳しい夏の旅路を歩いていく。そんな巡礼者の姿を詠んだ一句です。
はじめは頼るものが「杖いっぽん」では心もとないと感じていたのが、1日また1日と旅が進むにつれて、次第にその存在が大きく頼りがいのあるものに感じて来るのはなぜでしょうか。
日光月光とは、天の光源であるばかりでなく、衆生の疾病を治癒して災禍を消去してくれる薬師如来の脇侍(わきじ)で、三体でワンセットの薬師三尊です。すなわち日月とともに旅をすることで、他ならぬ杖に薬師如来の自在な神通力が宿っていき、そこに日に日に身体が一体化していくのです。
「すずしさの杖」とは、そうして神気に貫かれた身体そのものの比喩とも言えるでしょう。
8月4日にさそり座から数えて「支えになってくれるもの」を意味する4番目のみずがめ座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、身体をなじませ一体化していくことのできるような確かな拠りどころを見定めていきたいところ。
光を届ける媒体として
古代ギリシャの人びとによれば、太陽神アポロンは祝詞をつくり、それを正しい韻律にのせることによって、運命の女神さえ味方にしたのだといいます。
そしてその力によって、目に映る景色を一変させ、悪神の働きさえも鎮め、多くの人の未来を守護してみせたのだとか。神を崇める古代ギリシャでは「神像」が発展しており、その代表格こそがアポロンだったのです。
なぜアポロンにそんなことができたのか。その秘密は、彼が何より、そこはかとない不安や狂気、妬みや嫉み、功名心など、この世に巣くう何らかの「過剰さ」から人間の魂を解放することができたから。そうして彼の守護下では、みな平素に戻って、言葉ではなく行為を通じて、各々が全うすべき役割を淡々とこなしていけたのだといいます。
今週のさそり座もまた、自分なりの果たすべき役割や行くべき旅路、そこで自分の中で培われた光を、自分なりの行為や身体、それらのリズムで届けていけるかどうか、よくよく試されているものと思うくらいがちょうどいいでしょう。
今週のキーワード
アポロンの祝詞