さそり座
光を放つ先にあるもの
いのちの火を灯す
今週のさそり座は、「夜光虫岩を蝕むごとく燃ゆ」(大野林火)という句のごとし。あるいは、理性を失う快感か、明かりを消す情緒かを選んでいくような星回り。
「夜光虫」とは、海水の温度が三十度前後になると発生し、夜間の海で青白く幻想的に光る植物性プランクトンのこと。
蛍もそうですが、真っ暗闇に光る生きものというのは、それを目の当たりにしたものにどこか不思議と魂や生命を思わせる迫力があります。
掲句では、そんな彼らが「岩を蝕んで燃えているように見える」と詠まれている。これは実際に見えないはずのものを幻視しているのであり、そうすると「岩」とは何を表しているのかという話になってきます。
それは象徴的に捉えれば「命に終わりをもたらすもの」であり、「精神を窒息させるもの」でしょう。つまり、苦しみの元であり、それを浸食していくかのごとく、夜光虫はみずからの命を燃え上がらせていっているのです。
6月13日にさそり座から数えて「生まれ変わり」を意味する5番目のうお座で、下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、人生を再起動させていくにあたり、自己のうちでせめぎ合うもののどちらに身を任せていくべきか、選んでいくことになるでしょう。
わが身を捧げる
今あなたは誰/どこから自分の頑張りを見ていてもらおうとしているのでしょうか?
その点で今週のさそり座の指針となりそうなのが、インドの詩聖・タゴールの『ギータンジャリ』という詩集の最初に登場する詩です。「わが頭(こうべ)垂れさせたまへ君がみ足の塵のもと」という一節から始まる詩行の後半に、次のような箇所が出てきます。
「わが身を覆ひて立ちませ心臓(むね)の蓮華(はちす)に
わが高慢(たかぶり)は残りなく沈めよ涙に」
ここでは「わが身」、特に心臓のチャクラ(サンスクリット語で円盤や車輪の意)と冒頭の「君(きみ)」が再び対比させられている訳ですが、おそらくこれこそが詩集のタイトルである「ギータンジャリ(歌の捧げ物)」の意味するところであるように思われます。
つまり、自分のためではなく、自分に霊感を与えてくれている何かに光を当てていくためにこの詩は編まれたのであり、結果的にタゴールはこの光り輝く作品でアジア初のノーベル文学賞を受賞しました。
今週のさそり座は、こうした彼の在り方にできるだけ基準を合わせていきたいところです。
今週のキーワード
ハートチャクラ