さそり座
からだを整える
愛着を深めるために
今週のさそり座は、ニーチェの「もっとも必要な体操」のごとし。あるいは、自分自身への愛着を取り戻し、深めていこうとするような星回り。
あらゆる価値の相対化とニヒリズムの到来を端的に「神は死んだ」という言い方で示したニーチェは、ある面では非常に奔放すぎる人物でしたが、一方で繊細で細やかな努力の価値も知っている人間でもありました。
『人間的な、あまりに人間的な』に出てくる「もっとも必要な体操」という断章の中で、ニーチェはまず「小さな自制心が欠如すると、大きな自制心の能力も潰えてしまう」と断った上で、「毎日少なくとも一回、なにか小さなことを断念しなければ、毎日は下手に使われ、翌日も駄目になるおそれがある」と書き、最後を次のように結びました。
「自分自身の支配者となるよろこびを保持したければ、この体操は欠かせない」
6月6日にさそり座から数えて「習慣と才能」を意味する2番目のいて座で、満月を迎えていく今週のあなたもまた、何をするかよりも、何をしないようにするか。絞り込みと実践を通して、自己肯定感を少しでも高めていくことがテーマになっているのだと言えるでしょう。
生きる自然と小さな日常
「整体」という言葉が普及するきっかけをつくった野口晴哉は、自然に生きるとは何も獣のように山野を駆け回ることにあるのではなく、「白い飯を赤き血にして、黄色き糞にしていく」そのはたらきにこそあると言いました。いわく、
「生の食べ物を食べても、生水を飲んでも、海で泳いでも、森の中に入ってもそれが自然なのではない。人間という集合動物が街をつくり、その中に住んでいたって決して不自然ではないのだ。ただその生活のうちに生の要求をハッキリ活かすよう生くることが、生くる自然であることだけはハッキリしておかなければならない」(『月刊全生』)
つまり、あなたの身の内にある「よりよく生きる要求」すなわち自然の言葉をしっかりと聞いて、それを毎日の生活の中に反映させていくということ。
ただし、そうした自然の言葉は必ずしもこちらの都合のいい言葉とは限らず、実行しようとすればしばしば既存の生活や価値観が崩れていくことになります。
おそらく、「小さなことを断念するコツ」というのは、そうした崩壊をある程度意図的にひき起こしていくことにあるのではないでしょうか。今週はそんなことを頭の隅に置いて日々を過ごしていきたいところです。
今週のキーワード
体の声を聴いていくこと