さそり座
たまには順番を間違えてみる
<今ここ>での発動
今週のさそり座は、「雪解川でんぐり返るつんのめる」(山口隆右)という句のごとし。あるいは、濁流のようになってため込んでいた本能を一気に解放させていくような星回り。
最上川や信濃川のような、雪国の大河だろうか。春を迎え雪解け水が流れ込み、息せき切って目の前を流れていく。
「でんぐり返る」のも、「つんのめる」のもあわて者の姿態をあらわす言葉だが、いずれも勢いづいた川の水の描写となっており、作者のこころも思わずそうした川の一部と同化しているに違いない。
それだけ、ようやくやって来た春の到来を喜んでいるのであり、そう思うと掲句の「川」はまるで踊っているようにさえ感じられてくるし、そこには確かに何かが‟憑いて”いる。
それを流行りのアニミズムという言葉で片づけたくはない。もっとなまなましい土の匂いのする脈動であり、今ここで発動された呪力を帯びた何かである。
その意味で、19日(水)に太陽がさそり座から数えて「再誕」を意味する5番目のうお座へと移っていく今週のあなたもまた、より艶めかしく妖しい存在となって試しに気になる相手に向かって進み歩いてみればいいだろう。
嘘から出たまこと
‟あわて者”と言えば、かつて寺山修司はこんな詩を書いていた。
「肖像画に/まちがって髭(ひげ)を描いてしまったので ほんとに/髭を生やすことにした 門番を/まちがって雇ってしまったので ほんとに/門を作ることにした 月夜に/まちがって影が二つできてしまったので ほんとに/お月さまを二つ出すことにした」
そう、私たちはしばしば手順を間違える、というか現実のルールをひょいと飛び越えてしまうことがある。答えを先に書いてから、あわてて計算式を連ねていって辻褄を合わせるといったことはそう珍しくないのだ。
なぜそんなことが起きるのかと言えば、私たち人間が本当は現実を超えた存在であるから。現実というのは、みなで申し合わせてでっち上げたフィクションに他ならない。
今週のあなたは、そうした“あるべき現実”のルールを無視してしまいがちなだけに、口からついてでた嘘が後で本当になる、といったことも起きてくるかも知れない。
今週のキーワード
百鬼夜行