さそり座
愛編む
私はここにいる
今週のさそり座は、「すこしづつ人のかたちに毛糸編む」(斎藤朝比古)という句のごとし。すなわち、得体の知れない運命を両の手で紡ぎだしていかんとするような星回り。
服であれ靴であれ、人の着るもの身につけるものはその人の形をしている。掲句の作者は、その単純な事実に改めて気付いたのだ。あるいは句の中で編み物をしている人もまた、一目一目編むごとに、相手の人の形が愛おしく思えてきたのかも知れない。
愛には実体が必要であり、人間のあいだでは、自分の愛しているものの存在しか、完全には目につかないし、受け入れることもできない。それゆえに、美と実在は表裏一体であり、よろこびと実在感はひとつなのだ。
そして運命を思いのままにコントロールすることはできなくとも、みずからの感じる美とよろこびを信じ、それらに象られた誰かの「かたち」を信じることなら可能なはず。
その意味で、12日(火)にさそり座と真向いの星座であるおうし座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、いま信じられる相手は誰なのか、その「かたち」にどれだけ気付き、受け入れることができるかが問われていくだろう。
無言の前衛
その人の中で新たな価値だったり、新しい信仰が生まれつつある時というのは、いくら丁寧に言葉を紡ぐことを心がけても、かえってその乱暴さばかりかが目についてしまう。
なぜなら、何事かを言葉に託すごとに、その言葉に裏切られるから。それを繰り返すうちに、いつの間にか沈黙だけが残っていく。
結果的に、自分の中で新しく生まれてきた何かは黙って示されることになる。というより、「黙って置かれる」他ないのだ。その置かれたものに、相手が気付いて拾ってくれればいいし、気付いてくれなければそれはそれで仕方がない。
こちらもそのまま黙っているしかないだろう。相手を信じるというのは、そういうことであるはずだ。
こうして書いてみると、やはりそこで言葉を尽くして説明し、相手を説得するというのは、今週のさそり座からは最も遠い態度であるように思われる。
これまでとは少し違う形で、自分なりの愛を表現してみること。そして、そこではできる限り「引き算の愛」を意識してみるといいだろう。
今週のキーワード
不要な言葉は自然に返す