さそり座
否定でも肯定でもなく
血の訴え
今週のさそり座は「父酔ひて葬儀の花と共に倒る」(島津亮)という句のごとし。あるいは、愛すべきものの美醜の混交を、静かに受け入れていくような星回り。
厳粛であるべき葬儀の場で、こんな失態を演じてしまった父親。それを目にあたりにした子らの胸には、どれだけ複雑な思いが広がっただろうか。
父への軽蔑と憐れみの湧いてくるのと同時に、自分にも似たような過去の行状があったことが思い出され、自分にも父の血が流れているのだという諦めの気持ちがそこはかとなく心に隆起してくるのを感じたかもしれない。
血に刻まれる記憶や歴史は「感傷的で、美しいもの」ばかりとは限らない。
むしろ、幻想によって自分を守っている人の心の弱さを正確に告発してくるような非情さを含んでいるのではないか。
そして、そうした血の訴えを前に、人はいつの時代も忘却か想起かという二者択一を突きつけられていく。
16日(金)にさそり座から数えて「家庭」や「先祖」を意味する4番目のみずがめ座で満月を迎えていく今週は、いつも以上に自分の体内に流れる血というものの力を実感していくことになるでしょう。
スピノザの感情論
17世紀オランダで活躍したユダヤ人哲学者・スピノザは、その思想の集大成として『エチカ』を残したことで知られていますが、その中に印象的な一節があります。いわく、
「(人は)自分の憎むものが否定されるのを想像するとき、人は喜びを感じる。だが、人は、自分の憎んでいるものが破壊されたり否定されたりすることを想像するとき、心から喜ぶことはできない。われわれの憎むものが否定されたり、他のわざわいを被ったりするのを想像して生じる喜びは、必ず心の悲しみを伴っている」
同時に、人は時に親を憎みはしても、否定することはできないはずです。なぜなら、それは自分自身の存在否定にも通じるから。
スピノザにとって神が「信じる」対象ではなく、「理解する」ものであったように、今週のあなたもまた、親や家族など、自分に近しい人間の悲しさをよくよく理解していくといいでしょう。
今週のキーワード
近親憎悪の自覚