さそり座
逆説のエロス
仙境に遊ぶ夢を見る
今週のさそり座は、だんだん若くなっていく仙人のごとし。すなわち、老いを若さに反転させていくような星回り。
古代中国や中世日本の老いの図像には、しばしば老いたる者が最も若いというパラドキシカルな直観が垣間見られます。
それは気功やタントリズム、太極拳や養生訓などの実践を通していかにエロスを深化し純化させていくかというあくなき道の探究として今日においても僅かながら、その命脈はなんとか保たれています。
実際、脳科学的な見地としても、若返りは心身の調整コントロールによる脳の活性化と相関関係にあるそう。
これは、明らかに老いをあくまで「死ぬ向かう身体」と見なす西洋的な思考の枠組みとは異なる東洋的な枠組みに即した人間観であり、例えば子供らと遊ぶ良寛さんなどもそうした東洋的な老いの理想の具現者と言えるでしょう。
その意味で、8月8日(木)に自分の星座であるさそり座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、「若さに向かって逆成長する身体」という遊興的なまなざしを通じて、自分の内なるエロスを変現さしめ、また1つ新しい自分を迎えていきたいところです。
世阿弥の芸能観
能の大成者・世阿弥が著書の中で「花と、感興と、新鮮さと、これら三つは同じことである」と言うとき、この「花」とは実際の花ではなく「生命力の発現」に他ならない訳ですが、それは年齢をこえて生きてくる芸のちからでもあり、何事につけても新鮮さをもって何かを表現することを体得する以外に<まことの花>というものはないのだ、という独自の芸能観がベースにあったようです。
つまり、世阿弥にとってすべての芸術表現(=花)というのは、私たちのこころに新鮮さを呼び起こすと同時に、それがそのまま神事となって魂を鎮めてくれるものでなければならないし、そうであってこそ人を深いところで感動させることができるのだ、と。
自分の発する言葉や振る舞いが、誰かの心を鎮める神事となるまで、生命力を練り上げ、そして一気に花咲かせていくこと。今週のさそり座に与えられたテーマは、あるいはそんな風にも言えるかもしれません。
今週のキーワード
『風姿花伝』