さそり座
斜めにこぼれ落ちていく
死から生を見る
今週のさそり座は、黒澤清監督の『岸辺の旅』という映画のごとし。あるいは、自分や相手に残された時間を改めて確認していくような星回り。
3年前に夫・優介(浅野忠信)に失踪され、虚脱した日々を送っていた主人公の瑞希(深津絵里)の前に、ある日ひょっこり夫が現われ、自分がすでに死んでしまったこと、そしてここに戻ってくるまでに長い旅をしてきたことを告げる。
3年という待つ側にとっては決して短くはない期間に、一体夫はどこにいて、何をしていたのか。それを知るべく、主人公は夫の最後の旅に同行していく過程で、成仏しきれずこの世にとどまってしまっている人々の魂をあの世に導いていくのだが…。
死んだはずの配偶者が幽霊となって帰ってくるという、ある種のファンタジー系恋愛映画の王道を思わせるこの映画は、死者といっても直接見て触れることができ、生きた人間に混じって普通に生活しているという演出や、主人公の「違いなんて何もないのかもね、優介と私と」といったセリフもあいまって、どこか奇妙なリアリティーを感じさせます。
終盤に旅路の「終わり」の雰囲気が漂い始めるにしたがって、それが死者は死者であり生者とは違うのだという現実をかえって残酷に突きつけることに成功しています。
そして、こうした演出は今週のあなたのリアリティーにも少なからず通底するところが出てくるでしょう。
23日(火)にさそり座から数えて「努力の限界」や「到達点」を意味する10番目のしし座に太陽が移っていく今週は、叶うことと叶わぬこととの線引きが、静かながらもはっきりと示されてくるはずです。
流れ星が教えてくれること
私たちの社会では、よそ見をしながら、きょろきょろして歩いていると、「まっすぐ前を見なさい」とたしなめられてしまうところがあります。
小さい頃から「前へ、ならえ!」と号令をかけられ、教習所でも「脇見運転をするな」と怒られ、正面に掲げられた大いなる目標に一分の隙もなくおのれをあずけ努力することが奨励されてきた訳です。
ただ、私たちにはそれと同時にすき間への欲望や、チラリと一瞥した世界との出会いへのどうしようもない憧れのようなものがあるのも確かです。脇見やよそ見をしたその一瞬にしか訪れない、流れ星のような大事なもの。
微妙で、わずかに、ちょっとした、見間違いのようなものをこそ、今週は大切にしていきたいところです。
今週のキーワード
太陽系のはぐれ者としての流れ星