さそり座
踵で呼吸する
日本人本来の身体所作
今週のさそり座は、踵(かかと)から出る足運びのよう。あるいは、腰のすわりを良くして、重心を低く落ち着けていくような星回り。
現代において、私たちは足を前に出し、腰をひねって、肩を前後させ、手足振って歩いていますが、これは当たり前のように着物を着ていた時代の日本人においてはまったく見られない所作でした。
例えば、芸能記者である平山蘆江が1942年に書いた『日本の芸能』には、次のようにあります。
「腰のすわりのよい事も日本人独特の身がまえで、腰がふらついていては芸ごとばかりでなく、身体でする日本本来の動き一切は出来なくなる。剣術、柔術、相撲、馬術、槍術、弓術、何もかもそうなのである。そうでなくともただでさえ強い日本人の腰には近世まで両刀が横たわっていた、あれほど重いものを始終腰に横たえているために自然足どりにも踵にも力が入り(後略)」
そう、江戸時代くらいまでの日本人は踵を踏んで身体を前に運ぶことですり足気味に歩いていたのです。
これはやってみれば分かりますが、重心が上下に揺れない安定した状態で、足を動かしているどのタイミングでも瞬時に攻撃・防御に移れる隙のない歩き方です。
今週のさそり座もまた、こうした服の下のちょっとした動きを通して重心の在り方そのものを変えていくことで、本来の自分らしさを取り戻していこうとするような動きが出てくるでしょう。
「浮沈の位」
柳生新陰流の伝える教えのなかに、「浮沈(ふちん)の位」というものがあります。
これは身体の軸をぶらさずに、足腰を垂直に沈ませる(膝をえます)ことで、足腰の力を太刀に乗せることを意味し、やはり古来から培われてきた日本人の身体遣いに基づいたものでした。
例えば、田植えや草刈り、稲刈りなどでは、腰は曲げるのではなくすべて中腰で作業し、腰を垂直に落としていかないと、必ず腰が痛くなって長い作業を続けることができず、腰痛の原因になってしまいます。
日本人はこうして腰を落として膝を活かすことを、長い間身体運法の基本都とし、その際、自然と身体の重力に逆らわず踵を踏むことを併せて大事にしてきましたし、丹田の感覚というのもそこで大いに培われてきたはずです。
今週は、こうした「浮きて浮かず」「沈みて沈まず」というイメージを身体所作に取り込んでみるのもいいでしょう。
今週のキーワード
腰のすわりと丹田の感覚