さそり座
独行独歩
天使でさえ怯むような一歩を
今週のさそり座は、「眼球の分け入つていく雲の峰」(九牛なみ)という句のごとし。あるいは、人生における特別な現れを前にした時の眩暈のような感覚を楽しんでいくような星回り。
暗くて狭い眼窩を脱け出し、眼球がまるで金属音と共に打ち上げられた野球のボールのように、青い空の彼方へまっすぐに飛んでいく。
やがて眼球は雲の峰の中にまで入り込んで……、とまるでラピュタに乗り込まんとするパズーとシータみたいな話になってきましたが、いかんせんそれくらいの勢いが出てきがちなのが今のさそり座なんです。
今週は3日に同じ「水」のサインであるかに座で新月を迎えていきますが、さそり座から数えてかに座は9番目の位置関係にあり、これは「遠くへの移動」や「意識の拡張」を意味する場所。
この句自体は現実にはありえないので、夢のなかの世界の設定ですが、ただ夢のなかでぼんやりしているだけなんてのは、今週のさそり座には生ぬるい訳です。
むしろ眼球に大小の雲が触れていく感覚を自分から楽しんでいったり、何より無数の雲をかき分けていった先にある「雲一つない青空」まで突き抜けてやろうという、天使でさえ怯むような一歩を踏み出していくくらいでちょうどいいでしょう。
ある組織の解散宣言より
例えば、そんな一歩を実際に踏み出した人にジッドゥ・クルシュナムルティがいます。1929年8月2日、彼は自らを救世主として仰ぐ「星の教団」の解散を宣言しました。以下は、長い長いその宣言文のごく一部を引用したものです。
「私は自由であり、どんな条件にも影響を受けず、全体であり、部分的でも相対的なものでもない、永遠である〈真理〉全体なので、私を理解してくれ、自由で、私に追随することなく、私を使って宗教や宗派となる獄舎を創り出すことのないような、そのような人々を求めます。
(中略)
誰も外側から自由にはしてくれません。組織的な礼拝も、大義のために自身を犠牲にすることも、あなたがたを自由にすることはできません。組織の一員になっても、仕事に身を投じても、あなたがたは自由にはなれないのです。」
自分以外の誰も本当の意味で自分を救ってはくれないという、彼の宣言は一見すると残酷に響くかも知れません。しかし、澄み切った確信とともに在る彼の言葉は、まっすぐに「雲一つない青空」へとあなたを導いてくれるでしょう。
今週のキーワード
空がどこまでも青いから