さそり座
過去と現在が響きあう
遺失物とヒヤシンス
今週のさそり座は、「遺失物係の窓のヒヤシンス」(夏井いつき)という句のごとし。あるいは、静謐で不思議な心の反響に、耳をすませていくような星回り。
駅であれ警察であれ、遺失物係の窓口には日々何かを失くしてしまった人が訪ねてきます。
ヒヤシンスの青い花は、何かを失くした人たちの不安や悲しみ、諦めなど、さまざまな不安な感情を表現してくれているようでもありますし、逆に窓口に立つ係員からすれば唯一の慰めであり、どうにもできないやりきれなさを癒してくれる存在であるかもしれません。
掲句は、3つの単語を「の」で結んだだけの一見すると奇妙な構造ですが、「窓」をはさんで上下(左右)する「遺失物」と「ヒヤシンス」の音が不思議と響きあって、元の意味からほどけて結びつきあっているかのようにも感じられます。
いま目の前にある生きた存在と、過去に存在しはしたが徐々に失われつつある存在と。19日(金)にてんびん座で満月を迎えていく今週は、そんな両者のはざまに立ちながら、こころの琴線に触れてくるものにじっと耳を澄ませていくといいでしょう。
何も失われてはいない
たとえ取り組む仕事や、関わる世界、付き合う人間などが変わってしまったとしても、あなたが生きて前を向いて歩んでいる限り、その歩みの中に交わった人たちとの記憶やその痕跡はこれからも残り続けるでしょう。
SF作家・神林長平の『アンブロークン 戦闘妖精・雪風』という小説の冒頭に、
「すべては変わりゆく/だが恐れるな、友よ/何も失われていない」
という言葉が掲げられていますが、これは今のあなたにぴったりのメッセージと言えるかもしれません。
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