さそり座
ロールモデルはイソギンチャク
見えない努力と見える努力
今週のさそり座は、その装幀から香りがドクドク伝わってくる一冊の本のよう。
本というのは閉じた貝であるよりも、まず声なき歌に溢れたイソギンチャクのようなものであって、だからこそ、そこを通り過ぎた人々の記憶に不朽の残り香をもたらすのです。
意識的防衛をすり抜けて、脳が直接的に想起させられてしまうかすかな思いやひそかなビジョン。
そういうものが核心にある。ただそこから、「重要なディティールを書き込んでいく」ことができるか、非現実的な完璧主義に陥るかで、売り物としての一冊の本(完成品)になるかどうかが決まってくる訳です。
実はこれは「運に運ばれるための努力をする」という、さそり座の2017年のテーマにも繋がってくるところがあります。
自分の美しさ、魅力、才能が最大限に活かされるよう自分を磨き、人にもそんな自分を知ってもらい、周囲や大切な人との交わりの中で少しずつ自分にできることを増やしたり、その価値を高めていく。
見えない努力と見えるところでの周知、そのどちらか一方だけではダメなんです。
毒と共生
そんなさそり座にとってロールモデルとなってくれるのが、やはりイソギンチャクなのです。
イソギンチャクの触手には異物に触れると毒針を発射する「刺胞(しほう)」が無数にあり、これで魚などを麻痺させて捕食し生活を成り立たせているのですが、これはある意味、さそり座特有の感情的深みゆえに抱えこみやすい「毒」を、対象の本質を突く洞察力や仕事への徹底的なこだわりなど、社会的に受け入れられやすい形に変えて解き放っていくことを学ぶというテーマを暗示しているものと言えます。
そして、イソギンチャクの最大の特徴が、毒をもつ生き物であるにも関わらず、魚類のクマノミとの共生関係です。イソギンチャクはクマノミに触手の間のゴミを食べてもらったり、食べ残しをもらったり、天敵チョウチョウウオを追い払ってもらったりなど色々な恩恵を受けているのだそうですが、逆にクマノミは特殊な粘液を分泌しイソギンチャクの毒から免れることで、イソギンチャクを棲み処とし敵から守られた安寧を得ているのだそう。
これも、自分の毒の特性まで相手に深く知ってもらうことで、結果的にその相手と互いを補いあい支えあえるような共生関係を作りだしていくだけの、人としての懐の大きさを実現した一例と言えるでしょう。
なお一説によれば、イソギンチャクの触手の中にはさらに藻類が共生しており、クマノミが近くにいることによって触手が伸び、藻類の光合成が盛んになるという3種間による壮大な共生関係にあるとも考えられているのだとか。
クマノミや藻類のほかにも、心を許し、互いに支えあう共生関係にある生物は、今後の研究次第でまだまだ見つかっていきそうです。
※『いそぎんちゃく』(作詞: 谷口國博 作曲:中川ひろたか)が視聴できます
http://hoick.jp/mdb/detail/1416/%E3%82%A4%E3%82%BD%E3%82%AE%E3%83%B3%E3%83%81%E3%83%A3%E3%82%AF
今週のキーワード
自分を売り物としての一冊の本に仕上げる、重要なディティールを書き込んでいく、見えない努力と見えるところでの周知、ロールモデルとしてのイソギンチャク、毒と共生関係、「運に運ばれるための努力をする」(2017年)