さそり座
死に生を重ねていく
瞬間の魔法
今週のさそり座は、「晴ればれと亡きひとはいま辛夷の芽」(友岡子郷)という句のごとし。あるいは、空想の世界の住人になるのではなく、実人生のマジカルな可能性についてきちんと確かめていくような星回り。
早春に他の木々に先駆けて白い花を梢いっぱいに咲かせる「辛夷(こぶし)」は、そのつぼみの形が赤ん坊の握りこぶしに似ていることからそう名付けられたのだとか。
掲句において、作者は天上にいる「亡きひと」を思いながらそんな辛夷のつぼみを見つめている訳ですが、これはどう解釈したものか。
故人の好きな花だったのか、それとも「辛夷の芽」に故人の生まれ変わりを見たのだろうか。と、ここまで考えてみたとき、実際の辛夷を前にそんな夜の感傷など持ち込むまいと考えを改めた。
むしろ、晴ればれとした気持ちでいる作者の「いま」をこそ、まだ冷たい空気のなか、これから冬との別れを告げるようにいっせいに咲いていく辛夷の芽に託したのではないか。
生きとし生けるものはみな生まれ変わり死に変わりして、その一切は「いま」に在るのだ。
5日(火)にみずがめ座で新月を迎えていく今週、さそり座のあなたもまた、空想上の夢の世界に住むのではなく、実際の人生のマジカルな可能性についてきちんと検証していくことがテーマとなっていくでしょう。
マジカルであるとはありのままに物事を見つめること
ここで「マジカル」という言葉の元になっている「魔法」とは、どこかウソ臭くなってしまっていた現実に「ナマの感覚」を取り戻させるための直視のことを指します。
例えば、「首都」を意味する「京」という漢字の成り立ちには、以下のようなエピソードが秘められているそうです。
「国の都を京都という。京は城門の象であるが、その門は戦没者の屍骨を塗りこんで作った。(中略)戦役の勝利者は、敵の屍骨を集めて塗りこめ、その凱旋門を都城の入り口に建てたのである。これもまた隠れた祈りである。この怨念に満ちた死者たちの怒りは、すぐれた呪霊を発揮するものと考えられた。」(白川静、『漢字百話』)
歴史ある首都であれば、生きた人間以上におびただしい数の死んだ人間の気配がどこかに残されてあるはずです。
その意味でこの世とは、まず何よりも「死んだ者が思いを遺していく」場であり、次に生ける者がその上に思いを重ねていく訳です。
今週はそうした原始的本能がうごめき、忘れていた感覚を取り戻していく機会を、どうか逃さないようにしてください。
今週のキーワード
現に生きている私に立ち戻る術