さそり座
蓑虫の冬支度
次なる風景に備えて
今週のさそり座は「葉を一つ足す蓑虫の冬支度」(綾部仁喜)という句のごとし。あるいは、静かに密かに自分を次なる風景の中に溶かし込んでいくような星回り。
『枕草子』では蓑虫は鬼の子であるとされており、木の枝からぶら下がっているその姿は異形ながらどこかユーモラスな可愛らしさがあります。
そんな蓑虫をよく見ると、見慣れぬ「葉」が1枚くっついている。
それを「蓑虫の冬支度」と捉えたことで、ある種の「おかしみ」が生じて俳句になっている訳ですが、不意にくっついてきた「葉」の出現は蓑虫からすれば青天の霹靂であり、不安や脅威を感じる対象でさえあるかも知れません。
そんな抜き差しならない現実と、作者の視点によって生じた俳句的世界とのあいだの落差をいかに埋めていくことができるかということが、いわば今週のさそり座に与えられた課題なのだと言えます。
ただ身を固めたまま、何かを待っているだけでは、「冬支度」は始まることもなければ、永遠に終わることもないのだと、よく胸に刻んでおくことです。
見えにくい徳性の集まり
例えば、古代ローマの格言に「すべての人は自分の運命の建築家である」というものがありますが、これはあまりにすっきりと合理的過ぎる一方で、フランシス・ベーコンが運命について次のように書いているのは、実に味わい深いものがあります。
「運命の歩みは、空の銀河に似ている。銀河は多くの小さな星の集まりあるいは塊である。小さな星は散在していてよく見えないが、一緒になって光っている。同様に、多くの小さな、見えにくい徳性が集まって人々を仕合わせにするのである。」
蓑虫なんてこの世界のなかではごくちっぽけな存在な訳ですが、それがやはり同じくちっぽけな存在である1枚の葉と出逢い、寄り添って、ひとつの塊りとなっていく。それもまた運命の歩みなのだと言えるかも知れませんね。
今週は、目を凝らして注意深く観察することで、自分の運命を他のものと見分けていくことができるかもしれません。
今週のキーワード
小さな星は集まってともに輝く