さそり座
栄枯盛衰を静観していく
慌てなくても大丈夫
今週のさそり座は、シェイクスピアの『マクベス』での「きれいは汚い、汚いはきれい」という言葉のごとし。あるいは、美醜の混交の中に、本当の意味での自分らしさを見出していくような星回り。
物語の最初の場面、雷鳴と稲妻の中、3人の魔女が現れて会話を交わし、その場面の最後に冒頭のセリフを声を揃えて唱えるのですが、原文では“Fair is foul, and foul is fair.” でした。
フェアとファウル、適法と反則、正しいことと間違ったこと、という意味です。
つまり、人間の世界と魔女の世界とでは、正しいとされていることや価値観が逆になる。
あるいは、良い手段と良い結果、悪い手段と悪い結果がそのまま対応することなく、ねじれていくようなイメージで、岩波文庫の木下順二訳では「輝く光は深い闇よ、深い闇は輝く光よ」という訳でした。
これは単なる言葉遊びではありません。人や物事の栄枯盛衰を長い視点で冷徹に見つめていくことで得られる微妙なる明知の言葉であり、まさに今週のあなたに必要な指針と言えるでしょう。
当初は世間や周囲に間違っていると言われた考え、やり方ほど、時を経てやがて正しいことが証明されるものですし、柔弱なものはいずれか必ず剛強なものに勝っていくのです。
このことを、今週は改めて胸に刻んでいきましょう。
最大にして唯一の敵
『変身』などの作品で知られるプラハ生まれの作家カフカには、『罪、苦悩、希望、真実の道についての考察』という箴言集があり、そこには次のような一文があります。
「人間のあらゆる過ちは、すべて焦りからきている。有効なはずの手段や方法をさっさと放棄して、妄想に妄想を重ね自分を抑圧してしまう焦り。」
放棄と抑圧、あるいは投げやりな態度と自信のなさは、焦りからきているというこのカフカの洞察はまさに今のさそり座に必要なものと言えるでしょう。そして彼はさらに続けてこう言っています。
「人間には主要な罪が二つあり、他の罪はすべてこれに由来する。すなわち焦りと投げやりである。焦りのために人は楽園から追放され、投げやりのためにそこへ戻れない。が本当は、ただ一つの根本的な罪、焦りがあるだけかもしれない。焦りのために人は追放され、また焦りのために戻れないのだ」
もし自分自身のなかに焦りを促すようなダメな部分や、悪い一面があったとしても、今週は焦って何とかしようとせずに、まず「静観する態度」を大切にしていきましょう。
今週のキーワード
静観トンネル