さそり座
真実一路
言葉らしきものの不毛
今週のさそり座は、我が子を育てることで次第に慈愛を宿していく母のごとし。あるいは、身ぶるいして喜ぶ自分を、我が目で見届けていくような星回り。
言葉が多すぎると、さそり座の人はときどき呼吸困難のようになってしまう。いや、正確には、言葉らしきものが多すぎると、と言うべきだろうか。
茨木のり子の「賑々しきなかの」という詩がある。そこにはちょうど、受けとりたい言葉が受け取れずに苦しんでいるとき特有の、さそり座らしい心理が簡潔に表現されている。
「この不毛 この荒野
賑々しきなかの亡国のきざし
さびしいなあ
うるさいなあ
顔ひんまがる」
今週のあなたは、どこか乳がほしくて顔をくしゃくしゃにして泣いている赤ん坊のように、そうした「不毛」を解消し、渇いた心をどうにかして潤そうとしていくだろう。
真実と潤い
心をたっぷり充たすには、自分はどんな言葉を必要としているのか。そして、身ぶるいして喜ぶ我は、いったいどれだけ愛らしいのか。
先の詩のラストには次のように記されている。
「アンテナは
絶えず受信したがっている
ふかい喜悦を与えてくれる言葉を
砂漠で一杯の水にありついたような
忘れはてていたものを
瞬時に思い出させてくれるような」
欲しいのは、虚飾を廃した真実だけ。
それを思い出し、自分に与えていくことができたとき、あなたは想像を絶するほどにとてつもなくて、馬鹿馬鹿しく、カッコよくて、可愛らしい何かで在れるだろう。
今週は、きっとそんな自分を自分の手で取り戻していくことができるはず。
今週のキーワード
『茨木のり子詩集―谷川俊太郎選』岩波文庫